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月別アーカイブ: 2025年9月

第21回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~ニーズ~

“砂と溶湯で設計を実装する”現場力

砂型アルミ鋳造は、複雑形状・中空・一体化を短リードで形にできる、自由度の高いモノづくりです。EV化・軽量化・少量多品種・環境要請が重なる今、発注側のニーズはかつてなく多様で厳密。一方で、欠陥ゼロの鋳肌が金型から外れた瞬間や、CAEの仮説が現物で証明できた瞬間に宿る“やりがい”は、この仕事の特権です。本稿では、いま求められるニーズを実務視点で整理し、砂型鋳造ならではのやりがい、現場で使えるチェックリストと90日アクションまで一気にまとめます。


1|いま発注側が鋳造に求める「10のニーズ」

  1. 内部健全性の保証
     ピンホール・巻き込み・引け巣の抑制を工程設計+検査(X線/CT)+トレースで“言える化”。

  2. 寸法安定・再現性
     収縮見込み・仕上代・基準面の拘束をCAE+CMM/3Dスキャンでロット間のバラつきを圧縮。

  3. 短納期・小ロット対応
     木型レスの3Dプリント砂型やモジュール中子で試作〜量産立上げを高速化。

  4. 薄肉・一体化・中空
     ゲーティング/押湯の最適化、真空補助やチルで充填性と凝固順序を作り込む。

  5. 鋳造性×機械特性の両立
     合金(例:Al-Si-Mg系)、熱処理(T6)、金属組織のターゲット管理(Si形態、Fe相)。

  6. 機械加工性の設計
     基準面・掴み代・工具逃げ・クーラント溝など加工前提の鋳造設計。

  7. 表面品質・漏れ保証
     漏れ試験(エアリーク/ヘリウム)、浸透探傷、ショット条件の再現性。

  8. コストと歩留まり
     湯道・押湯の最適化→歩留まりUP、二次加工工数・仕上代の最小化でトータル原価を下げる。

  9. 環境・安全(ESG)
     砂再生率、VOC削減、エネルギー原単位、粉じん(シリカ)対策の見える化。

  10. データ接続
     CAD→CAE→造型→検査→台帳のデジタルスレッドで変更追従と監査対応を高速に。


2|この仕事の“やりがい”——8つの瞬間

  1. 欠陥の因果をほどけたとき
     CTの不良マップとCAEの自由表面乱流がピタッと重なり、湯道修正で一発改善できたときの快感。

  2. 難形状が“鋳物ならでは”で解決
     溶接や組立では難しい一体化を、砂と中子でシンプルに実装。設計者の「助かった」が直に届く。

  3. リードタイムを縮めて市場に間に合わせた
     3Dプリント砂型で試作10日短縮。量産受注や顧客の新製品発売に貢献できる手応え。

  4. 鋳肌が語る
     ショットを終えた瞬間の均一な肌と角の張り。工程設計が正しかったと証明される。

  5. 歩留まりが数字で上がる
     歩留まり+8pt、スクラップ−50%。原価が動くのを目で見られる喜び。

  6. 多職種で勝つ
     設計・CAE・造型・溶解・仕上・検査が同じ一枚図で噛み合い、手戻りゼロで流れた日。

  7. 匠の勘を仕組みにできた
     “ここにチル”“ここでベント”という暗黙知を標準テンプレとSOPに落として、誰でも再現できるように。

  8. 環境・安全の誇り
     VOC・粉じん・灼熱の現場で、安全・環境を守り切る運用を回せたときの静かな誇り。


3|発注者別「ニーズの翻訳」早見表

  • 設計・開発:形状自由度・試作速度・内部健全性(CT)・CAE対話。

  • 調達・原価:歩留まり・加工工数・不良率・リードタイム・代替性。

  • 品質保証:検査基準、判定等級、トレース、是正の再発防止。

  • ESG/監査:砂再生率、VOC/CO₂、粉じん・安全、LCA情報。


4|“そのまま出せる”サービス・パッケージ

  • 試作スプリント(最短立上げ)
    3D砂型+簡易治具+初回CT→CAEへ即リプレイ→2週で形状・湯道FIX

  • 内部健全性保証パック
    充填/凝固CAE→ゲーティング設計→CT/漏れ試験→不良マップ添付の出荷証跡

  • 加工同時設計パック
    基準面・掴み代・工具逃げのテンプレ提示→仕上代最小化→加工サイクル短縮

  • ESG可視化パック
    砂再生率・VOC・電力原単位・再生アルミ比率を品番別ダッシュボードで提示。


5|現場で効くチェックリスト

砂・中子

  • 粒度・含水・通気・圧縮強度のSPC

  • 中子ベント位置と断面積の標準化

  • 砂再生比率/新品補給の最適点

溶湯

  • 水素量・温度・保持時間の基準票

  • フィルタ・フラックスのロット管理

  • 取鍋予熱・内面清浄度

型・注湯

  • ゲート・押湯・チルのテンプレ適用

  • 自動注湯の流量プロファイル確認

  • 真空補助・ベントの効き点検

検査・台帳

  • CT/X線の判定等級と運用範囲

  • 不良マップ→CAE戻しの定着

  • 原単位(砂/合金/電力/ガス/時間)の品番集計


6|KPI

  • 歩留まり(%)/スクラップ率(%)

  • 内部欠陥率(CT判定)/漏れ不良率

  • 寸法一次合格率(CMM/3Dスキャン)

  • 試作リードタイム/設計変更リードタイム

  • VOC・粉じん・CO₂原単位/砂再生率

  • 労災・ヒヤリハット件数/SOP順守率


7|ショートケース

A|薄肉ハウジングの巻き込み減

  • 介入:自由表面乱流を下げる湯道再設計+注湯流量の二段プロファイル。

  • 結果:CTで気孔−80%、歩留まり+6pt。

B|漏れ不良の再発防止

  • 介入:押湯位置移設+チル追加、熱いき過ぎ部に冷却補正。

  • 結果:リークゼロ更新、加工待ち在庫も解消。

C|ESGデータの可視化

  • 介入:砂再生ログと電力を品番紐付け、月次ダッシュボード化。

  • 結果:VOC−30%、受注入札で加点。


8|90日アクション

  1. 不良トップ3を“因果で”潰す
     CT不良マップ→CAE検証→湯道/押湯の一次改訂→1スプリント検証

  2. 基準票のA3化&掲示
     砂(粒度/含水/通気/強度)・溶湯(水素/温度/保持)・注湯(流量プロファイル)を一枚で見える化

  3. 加工前提の設計レビューを定例化
     週1で設計・加工・鋳造の三者会議。仕上代・基準面・掴み代を最初に決め、手戻りを半減。


結び

砂型アルミ鋳造の価値は、設計課題を“砂と溶湯の論理”で解く力にあります。
ニーズは厳しくても、欠陥の因果を断ち切る知恵と、数字で語れる再現性を積み上げれば、やりがいは確実に成果へつながる。

次のロットでは、因果で潰す/一枚で見せる/加工と同時に決めるの三手から。
砂の上に走る湯の道筋は、今日も工場の思想そのものです。

 

 

 

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第20回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

砂と溶湯で、設計思想とサプライチェーンを映し続ける産業

砂型アルミ鋳造は、もっとも“自由度”の高いものづくりです。複雑な空洞・一体成形・肉厚差・鋳ぐるみ…設計者の悩みを砂と溶湯で解決してきました。ところがこの70年、素材・設備・品質要求・環境規制・市場構造の変化を受けて、工場の中身は別物と言って良いほど進化しています。本稿では、年代別の流れ→プロセス技術→品質とデジタル→環境と人材→これからの順に、現場で役立つ視点で整理します。


1|年代別ダイジェスト:何がどう変わったか

① 戦後〜高度成長(1950–70s):職人技から量産へ

  • **木型+生型(グリーンサンド)**が主流。

  • 溶解は重油炉・ガス炉・反射炉が中心、合金はJIS系の汎用品。

  • 品質は破面観察・寸法ゲージが主で、欠陥解析は経験依存。

② 輸出拡大と自動車要求の高まり(1980–90s)

  • 化学硬化砂(フラン・フェノール樹脂)やコールドボックス中子が普及、薄肉・複雑形状に対応。

  • 溶湯処理にアルゴン脱ガス・ロータリーデガッサセラミックフィルタが導入。

  • 分光分析(OES)・水素量測定・X線が日常化。ISO 9001自動車規格が現場に入る。

③ グローバル調達と自動化(2000s)

  • CNC・3D CADで木型→アルミ型、治具の高精度化。

  • 自硬性砂の機械混練・再生ライン、造型機のサーボ化でバラツキ圧縮。

  • 溶解の電気化(抵抗炉・誘導炉)や自動注湯の採用が進む。

④ デジタル・環境・短納期の三重苦→三位一体(2010s)

  • **鋳造CAE(充填・凝固・欠陥予測)**が設計の標準ツールへ。

  • CTスキャン・画像解析で内部品質を“見える化”。

  • VOC・粉じん・CO₂への規制対応、砂再生・バインダ低VOC化が加速。

  • 少量多品種・試作短納期に**3Dプリント砂型(バインダジェット)**が登場。

⑤ いま(2020s〜):EV化・軽量化・データ連携

  • モータハウジング、インバータケース、バッテリートレイ等の大型薄肉化に対応。

  • デジタルスレッド(CAD→CAE→型→造型→検査→トレース)で手戻り最小化。

  • セカンダリーアルミの活用、LCA視点の取引が広がる。


2|プロセス技術の進化:砂・溶湯・金型・注湯

砂・中子

  • 生型(クレイ系):量産に強い。回収・再生の最適化で品質安定。

  • 自硬性砂(フラン/フェノール):大型・厚肉・寸法安定。VOC対策がカギ。

  • コールドボックス中子:複雑中空に強い。アミン対策・臭気管理は設備勝負。

  • 無機バインダ:低臭・低発煙。耐湿性と強度の両立がテーマ。

  • 3Dプリント砂型木型レスで最短納期。量産前試作や年次小ロットに効く。

溶解・溶湯処理

  • :反射炉→**ガス高効率炉・電気炉(抵抗・誘導)**へ。熱ロス可視化が定着。

  • 処理脱ガス(アルゴン/窒素)精錬フラックスフィルタリング

  • 成分管理:OESでその場調整、水素量監視でピンホール抑制。

ゲーティング・押湯設計

  • 職人の勘→CAEとモジュラス設計

  • チル・冷し金の適用、押湯スリーブ・カバーで歩留まりと健全性を両立。

注湯と固化

  • 自動注湯・流量制御で乱流最小化、酸化膜巻き込みを回避。

  • 真空補助・負圧で充填性向上、スクイズ併用で気孔減。


3|品質保証の変遷:破面と勘から、データと可視化へ

  • 受入/工程管理:OES(成分)、水素・温度・酸化膜指数のルーチン化。

  • 検査:X線→CT(3D内部欠陥)染色浸透・磁粉(鋼部鋳ぐるみ)寸法CMM・3Dスキャン

  • 工程統計:SPCで粒度・圧縮強度・含水・通気度を管理。

  • フィードバック:検査結果はCAEと不良マップに戻し、次回の湯道修正へ。


4|生産性と安全衛生:人を守り、歩留まりを上げる

  • 自動化:造型・中子セット・型バラシ・ショット・仕上げのセル化。

  • 人の負荷対策アシストスーツ・ハンドリングロボで腰・肩を守る。

  • 粉じん/シリカ:集塵・局排・保護具の標準化。

  • 溶湯災害:湿気・水分混入ゼロのルールと点呼、飛散防止床耐熱個装


5|環境とサステナ:砂・バインダ・エネルギー・アルミ

  • 砂再生:機械・熱処理の組合わせで回収率UP、廃棄量と購入量を双方向で削減。

  • 低VOC化:無機バインダ・低発煙スリーブ・**RTO(蓄熱式酸化炉)**等の導入。

  • エネルギー:炉の断熱・蓋管理・誘導炉の力率最適化

  • 原料リサイクル(セカンダリー)アルミの比率増、合金設計で機械特性と鋳造性の両立


6|市場の変化:軽量化・EV・小ロット化

  • 自動車:EVでケース・トレイの大型薄肉が増加、寸法安定と内部健全性の両立が必須。

  • 産機・インフラ:一体化・複雑化、試作短納期の要求が増。

  • 航空・ロボ:ポロシティ・介在物の厳格管理、トレーサビリティが勝負。


7|デジタルスレッド:設計から検査までを一本に

  • CAD→CAE→CAM→造型→検査→台帳をIDで連結。

  • 不良発生時は検査点群→CAEへリプレイ→ゲート修正→型データ即日更新

  • 原単位の見える化:砂・合金・ガス・電力・時間を品番別に集計し儲けの構造を把握。


8|ショートケース

A|薄肉箱物の巻き込み気孔を1/5に

  • 介入:CAEで自由表面乱流を低減する湯道再設計+自動注湯の流量プロファイル導入。

  • 結果:内部気孔率−80%、仕上げ工数−15%。

B|VOCを半減

  • 介入:中子を無機バインダへ、造型室に局所RTO

  • 結果:作業環境改善、近隣苦情ゼロ、CO₂も削減。

C|試作リードタイムを10日短縮

  • 介入:3Dプリント砂型+アルミ簡易治具、CTで初回合否判定→CAEへ即フィードバック。

  • 結果:試作〜量産移行が1スプリント短縮。


9|現場で効くチェックリスト

砂・中子

  • 粒度・含水・通気・強度のSPC管理

  • 中子ガス抜き位置/断面積の標準化

  • 砂再生比率と新品補給の最適点

溶湯

  • 水素量・温度・保持時間の基準票

  • フィルタ・フラックスのロット管理

  • 取鍋の予熱・清浄度点検

型・注湯

  • ゲート・押湯・チルの標準テンプレ

  • 注湯流量プロファイルのレシピ化

  • 真空補助・ベントの効き確認

検査・台帳

  • CT/X線の判定基準(欠陥等級)

  • 不良マップ→CAEへの戻し運用

  • 合金・砂・エネルギーの原単位を品番別に集計


10|これから5年の論点

  1. 3Dプリント砂型の常用化:試作だけでなく小ロット量産へ。造型コストと後処理の最適点。

  2. 無機バインダ×高機能中子:低臭・高強度・耐湿の三立。

  3. 低炭素アルミ調達:再生材比率や再エネ電力のLCAを価格に織り込む。

  4. インラインCT/AI判定:100%検査×自動判定で手離れ。

  5. デジタルスレッド完成:設計変更がその日の型データ・作業票に反映される“遅延ゼロ”の工場へ。


11|90日アクション

  1. 不良トップ3の“因果”をCAEで検証
     現物CT/X線→不良マップ→充填・凝固解析→湯道・押湯の一次修正。1サイクルで効果を数値化。

  2. 砂と溶湯の“基準票”を更新
     粒度・含水・通気、H₂・温度・保持時間の許容レンジと異常時対応をA3一枚に。現場掲示。

  3. LCAミニサーベイ
     合金(再生比)、燃料・電力、砂再生率の原単位を見える化。CO₂と原価の二軸で改善候補を抽出。


結び

砂型アルミ鋳造は、自由度と包容力を武器に、時代ごとの要求に応えてきました。
生型・自硬性・中子・3Dプリント、反射炉・電気炉、勘・CAE、破面・CT——どの時代でも要は同じ。**“健全で、寸法が出て、間に合う”**ことです。

次の現場では、CAEで因果を掴む/基準票をA3で運用する/原単位を見える化の三手から。
砂と溶湯の“当たり前”を磨き込むことが、これからの競争力になります。

 

 

株式会社長川原金属では、一緒に働いてくださる仲間を募集中です!

私たちが採用において最も大切にしているのは、「人柄」です。

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