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月別アーカイブ: 2025年10月

第23回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~「試作2週→量産へ」~

 

 

製品開発〜量産立上げに焦点を当て、**“早く・安定して・狙いの物性で”**走り出すための実戦ガイドをお届けします。設計者・営業・生産技術・品質保証が同じ地図を見るための、ステージゲート方式のロードマップです。️


1|コンセプト整理:合金×形状×生産数の三角形

  • 合金選定

    • Al-Si(AC4C等):鋳造性◎、薄肉・流動性を優先。

    • Al-Mg(AC7A):耐食・溶接性重視。

    • Al-Cu(AC2A):強度重視(熱処理T6/T7前提)。

  • 形状:薄肉リブ・ボス・中空は中子設計が鍵。

  • 生産数:年間ロット数で砂型・ノーベーク・金型試作など投資判断が変わる。

目標物性(引張強さ/伸び/硬さ)と重要寸法のCPK最初に数値化して共有。


2|DFM(鋳造設計性)の診断チェック ✅

  • 肉厚マップ:極端な厚薄を緩和、肉盗みでホットスポットを分散。

  • R取り:内角はR2〜3以上で割れ防止&流動改善。

  • 抜き勾配:砂割れ防止&肌向上。

  • 基準面:機械加工の掴み基準を設計段階で決定。

  • 穴・ボス:コア有無、ベント径、コアプリント強度。

  • 湯口位置の自由度を残す形状か?(後から変更しやすいようボス/パッドを仮設定)


3|CAE(充填・凝固)で“失敗を先に潰す” ️

  • 充填解析:乱流/空気巻込みのホットゾーン、到達時間、温度フロントを確認。

  • 凝固解析:凝固順序、引けリスク、押湯効果、冷却条件。

  • 鋳巣シミュレーション結果を湯道3案で比較し、採用基準を明文化。

  • バーチャルDOE:注湯温度・速度・押湯断熱・コアベント条件を多点で走らせる
    試作回数を1回削れるだけで、開発費とリードタイムが大幅削減⏱️


4|試作(EVT/DVT)— 24時間で学び切る体制 ⚗️

  • サンプル数は最低n=5〜10でバラツキを把握。

  • 全数X線重要部寸法3次元測定欠陥地図を作成。

  • 金相(共晶Siの形態、Fe系介在物)や密度測定で内部品質を把握。

  • 熱処理炉内温度分布保持時間サーモロガーで裏取り。

  • ショートループ:試作日に成形→評価→その場で湯道改修→再鋳造まで回す“ワンデー改善”。⚡


5|PPAP/APQP視点の量産準備

  • FMEA(鋳造&仕上げ&機械加工):発生×重大度×検出で優先度を決定。

  • 管理計画書:砂QC、溶解温度、脱ガスH値、注湯温度、押湯観察、熱処理条件、検査規格。

  • 作業手順書(SOP):写真・ピクト中心で言語依存度を低く

  • 初期流動管理(ILC):初回ロットの100%X線/寸法を前提とし、合格トリガを明記。


6|量産立上げ(SOP)— “2週で安定”の運用モデル ️

  • 日次:砂QC、溶解H、温度分布、歩留まり、欠陥率。

  • 週次:湯道・押湯の見直し会、仕上げ手直しの再発防止

  • 月次:原材料(地金・回収材)ロット間差の評価、Sr/Ti-B添加量のリセット検証。

  • ばらつき源を潰す順序:①砂→②湯→③温度→④押湯→⑤熱処理→⑥仕上げ→⑦加工。

  • カイゼンの掟作業者を責めず工程を責める。再現性のない“勘”を数値化する。


7|熱処理で“狙いの伸び”を出す

  • 溶体化温度×保持時間:過剰は粗大化、不足は強度伸び不達。

  • 急冷:水温・攪拌・部品姿勢で歪みと残留応力が変わる。

  • 時効:T6/T5/T7の違いとバラツキ管理

  • 硬さ分布部位でマッピングし、線膨張差による反りを予見。


8|機械加工の“勝ち筋”

  • 鋳肌→基準出し→穴→タップの標準順序。

  • 刃具摩耗の管理:巣当たりによる刃欠けを画像AIで早期検知。

  • 治具設計鋳物基準で把持し、クランプ歪みを最小に。

  • 切粉処理:Al切粉の回収・再溶解までを一気通貫で設計。♻️


9|検査:X線・リーク・寸法SPCを一枚ダッシュボードに ️

  • X線判定基準(等級表)をサンプル画像付きで共有。

  • リーク:機密部はエア/水/ヘリウムいずれか。治具漏れを先に潰す。

  • 寸法CPK≥1.33を目安に、外れ値は工程へフィードバック

  • ダッシュボード欠陥率・歩留まり・再作業時間・H値・温度偏差リアルタイム表示


10|サステナビリティ:循環と脱炭素に効く7手

  1. 回帰砂再生率↑(焼成再生+微粉抜き)

  2. 溶解炉の高効率化(蓄熱バーナ・誘導炉)

  3. 廃熱利用(乾燥・予熱)

  4. 地金歩留まりの月次KPI化

  5. 発煙処理(RTO/スクラバー)

  6. LCAでの製品環境値を顧客と共有

  7. 再エネ調達夜間負荷平準化でCO₂原単位低減


11|人材と教育:技術を“見える化”して継承 ‍

  • 動画SOP:注湯姿勢・湯面・押湯の“見え”を一人称カメラで。

  • 技能マトリクス:砂/コア/溶解/注湯/仕上げ/検査でレベル管理。

  • 評価安全>品質>生産性の順。ヒヤリハット共有会で事故ゼロ文化を醸成。

  • 多能工化:繁忙変動に耐えるローテーション表を標準化。


12|ケーススタディ:薄肉ハウジングの“ひけ巣ゼロ化”

課題:中心ボス周辺に引け巣。
施策:肉盗み+押湯発熱化+ベント追加+注湯温度を-10℃、冷却制御で温度勾配を再設計。
結果:X線欠陥率が8%→1.2%歩留まり+9.5pt、機械加工サイクル▲12%。
学び湯道・押湯・温度・肉厚の同時最適が鍵。単独対策は限界がある。


13|まとめ

試作から量産立上げまでを一枚の地図でつなぐと、品質の初期値が一段上がります。

  • DFMチェックCAEワンデー改善PPAP/ILCSOP運用ダッシュボード可視化
    この循環が回り始めると、不良は“起きてから直す”でなく“起きる前に消す”へ。今日からできる一歩は、“欠陥地図”のテンプレ作成です。次の試作で、あなたの鋳物はきっと“最初から強い”。

 

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第22回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~“歩留まり10%向上”~

 

砂型アルミ鋳造の基礎から、現場で効く“歩留まり向上のツボ”までを一気通貫で解説します。砂・金枠・中子・溶解・注湯・ばり取り・熱処理・検査…すべてが連鎖する“製造の総合格闘技”。要点を押さえれば、**品質×コスト×納期(QCD)**をまとめて底上げできます。


1|砂型アルミ鋳造とは?— 自由度とコスパのバランスが魅力 ️

砂型鋳造は砂とバインダーで作った型(砂型)に溶けたアルミを流し込み、凝固・取り出し・仕上げを行う工法。金型が不要なので初期費用が低く、形状自由度が高いのが強みです。

  • 少量多品種大型品に◎

  • 肉厚差の大きい形状中空も中子で対応

  • 設計変更や試作サイクルが速い⚡

主な合金:Al-Si系(AC4B/AC4C/ADC12相当)Al-Mg系(AC7A)、**Al-Cu系(AC2A)**など。鋳造性・機械的性質・耐食性のトレードオフを理解して選定します。


2|砂(モールド)のキホン:粒度・含水・コンパクタビリティが命 ️

**緑砂(クレイ+水)**を使うか、**フラン/フェノール等の自硬性砂(ノーベーク)**を使うかで運用が変わります。

緑砂の要点

  • 粒度(AFS GFN):細かい→表面きれい&ガスこもりやすい/粗い→ガス抜け良いが肌荒れ。

  • 含水率:多すぎるとガス欠陥、少なすぎると崩れ。

  • コンパクタビリティ(締固め性):圧縮強度・透気度と合わせて管理。

  • 粘土活性:回帰砂の焼け砂が増えると粘結力低下→生砂追加やベントナイト調整で補正。

自硬性砂の要点

  • 樹脂添加量・硬化時間の安定化

  • 混練ムラ防止(コアシュート前後のタイムラインも含めて)

  • **LOI(残留着火分)**管理で発煙・ガス欠陥を抑制

現場Tips:“見た目OK”は当てにならない圧縮強度/せん断強度/透気度/含水率1ロット1記録で可視化


3|模型(パターン)と中子:収縮・抜き勾配・コアプリントの三位一体

  • 模型収縮代:Al合金は約1.0%前後(合金・肉厚で変動)。温度履歴を踏まえた実測値を蓄積。

  • 抜き勾配:砂破損を防ぎ、肌荒れ・寸法バラツキを抑える。

  • 中子(コア)コアプリントで確実に位置決めし、ベント(ガス抜き)を忘れない。薄肉長尺コアは補強棒コアペーストで座屈対策。

  • パーティング(合わせ面):鋳造後のバリ削減=後工程コストを直撃。早期検討が吉✍️


4|湯道・押湯(ランナー&ライザー)設計:欠陥の8割はここで決まる

  • 湯口位置静かに満たす(サブゲートやチョークで流速制御)。

  • 上昇充填で巻き込み気泡を回避。

  • 押湯熱節(ホットスポット)へ給湯が届く配置。保温スリーブや発熱ライザーで凝固末端を制御。

  • チョーク断面:乱流化を抑え、酸化膜(フィルム)巻込みを最小化。

  • フィルタ:酸化物・スラッジ除去に有効(圧損と充填時間のバランス)。

実務の裏ワザ:“欠陥位置=凝固末端”ではない場合がある。湯回り&ガス経路の再現をCAEか透明樹脂モデルで検証


5|溶解・取鍋・脱ガス・精錬:金属の“清浄度”を守る

  • 溶解炉(反射炉・保持炉・電気炉):温度の二段階管理(溶解→保持)で酸化/吸水素を抑制。

  • 脱ガス:ロータリーデガッサー+Ar/窒素吹込み、水素量PoD/減圧法で測定。

  • 精錬剤:フラックスで非金属介在物を凝集。

  • 粒子微細化Ti-B系で結晶微細化、SrでAl-Si共晶の改良。

  • 取鍋管理スラグすくい流出部の酸化膜切替を徹底。取鍋・注湯杓の予熱も忘れずに。

“良い湯”の定義=温度(±5〜10℃)×清浄度(低H)×酸化膜最小温度計の校正履歴を必ず残す


6|注湯・凝固・押湯切れ:秒で結果が変わる⏱️

  • 注湯速度:遅すぎ→コールドシャット、速すぎ→巻込み。

  • 余熱:寒い季節・大型鋳型は型温UPで初期凝固を安定化。

  • 押湯観察沈み量温度減衰で給湯継続性を評価。

  • 冷却・ばらし:時期尚早は熱割れ、遅すぎは生産性ダウン。品種ごとに標準時間を設定。


7|仕上げ・熱処理・機械加工:全体最適の視点で

  • ショット/ブラスト:表面清掃と梨地の統一。

  • ゲート・ばり除去:後加工面のダメージを回避する刃具選定。

  • 熱処理:Al-Si系はT6(溶体化→焼戻し)で強度UP、Al-Mg系は析出硬化で靭性向上。

  • 機械加工基準面→穴→タップの順。鋳造ひけや残留砂に注意。クーラント給水と切粉排出を重視。


8|欠陥図鑑と対策(保存版)‍

  • ピンホール:水素・砂の水分・被膜反応→脱ガス強化/含水率管理/塗型改良

  • 引け巣:給湯不足・押湯不足→押湯設計/発熱保温/肉盗み

  • 湯じわ/コールドシャット:充填遅れ→注湯速度/型温/ゲート変更

  • 酸化膜巻込み:乱流→落とし湯禁止/チョーク設計/フィルタ

  • 砂落ち/砂かみ:砂強度不足→砂管理/塗型/振動

  • 熱割れ:拘束+急冷→R付与/冷却制御/後熱

X線・断面・密度測定で“見える化”。欠陥地図を作って設計へフィードバック


9|歩留まり10%向上の“型”

  1. 砂の日次QC(圧縮強度・含水・透気・GFN・LOI)を看板化

  2. 湯道・押湯の標準ライブラリ化(製品カテゴリ別)

  3. 脱ガスログ×欠陥率の相関を月次レビュー

  4. 温度ガン+データロガで注湯温度のバラツキを±8℃以内

  5. 仕上げ不良の再発見える化(作業者ではなく部位で管理)

  6. “欠陥→設計変更”の回路を最短化(CAE/3Dモデル即修正)


10|安全・環境・DX

  • 安全:溶湯飛散・高温・粉じん・騒音。PPE(フェイスシールド/耐熱手袋/耐熱靴)と注湯立ち位置の標準化。

  • 環境:回帰砂の再生、バインダー発煙対策、溶解炉の省エネ燃焼

  • DXIoT温度計・振動センサで炉&ミキサーを予知保全、SPCで寸法&強度を統計管理。画像AIでばり・巣の自動検出も有効。


11|まとめ

砂型アルミ鋳造は砂×湯×時間の“微差の戦い”。砂管理・湯道設計・清浄度・温度・押湯・標準化の6点を回せば、歩留まりと品質は必ず伸びます。まずは**「砂QCの見える化」「湯道の標準テンプレ化」**から始めてみましょう。今日の1枚のQC表が、来月の不良率を半減させます。✨

 

 

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私たちが採用において最も大切にしているのは、「人柄」です。

当社は小ロットでニッチな部品の鋳造を得意としており、毎日違うものを造っているため日々の業務は変化があり、モノづくりが好きな方には楽しんでいただけると思います。

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