ブログ|株式会社長川原金属

オフィシャルブログ

第22回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~“歩留まり10%向上”~

 

砂型アルミ鋳造の基礎から、現場で効く“歩留まり向上のツボ”までを一気通貫で解説します。砂・金枠・中子・溶解・注湯・ばり取り・熱処理・検査…すべてが連鎖する“製造の総合格闘技”。要点を押さえれば、**品質×コスト×納期(QCD)**をまとめて底上げできます。


1|砂型アルミ鋳造とは?— 自由度とコスパのバランスが魅力 ️

砂型鋳造は砂とバインダーで作った型(砂型)に溶けたアルミを流し込み、凝固・取り出し・仕上げを行う工法。金型が不要なので初期費用が低く、形状自由度が高いのが強みです。

  • 少量多品種大型品に◎

  • 肉厚差の大きい形状中空も中子で対応

  • 設計変更や試作サイクルが速い⚡

主な合金:Al-Si系(AC4B/AC4C/ADC12相当)Al-Mg系(AC7A)、**Al-Cu系(AC2A)**など。鋳造性・機械的性質・耐食性のトレードオフを理解して選定します。


2|砂(モールド)のキホン:粒度・含水・コンパクタビリティが命 ️

**緑砂(クレイ+水)**を使うか、**フラン/フェノール等の自硬性砂(ノーベーク)**を使うかで運用が変わります。

緑砂の要点

  • 粒度(AFS GFN):細かい→表面きれい&ガスこもりやすい/粗い→ガス抜け良いが肌荒れ。

  • 含水率:多すぎるとガス欠陥、少なすぎると崩れ。

  • コンパクタビリティ(締固め性):圧縮強度・透気度と合わせて管理。

  • 粘土活性:回帰砂の焼け砂が増えると粘結力低下→生砂追加やベントナイト調整で補正。

自硬性砂の要点

  • 樹脂添加量・硬化時間の安定化

  • 混練ムラ防止(コアシュート前後のタイムラインも含めて)

  • **LOI(残留着火分)**管理で発煙・ガス欠陥を抑制

現場Tips:“見た目OK”は当てにならない圧縮強度/せん断強度/透気度/含水率1ロット1記録で可視化


3|模型(パターン)と中子:収縮・抜き勾配・コアプリントの三位一体

  • 模型収縮代:Al合金は約1.0%前後(合金・肉厚で変動)。温度履歴を踏まえた実測値を蓄積。

  • 抜き勾配:砂破損を防ぎ、肌荒れ・寸法バラツキを抑える。

  • 中子(コア)コアプリントで確実に位置決めし、ベント(ガス抜き)を忘れない。薄肉長尺コアは補強棒コアペーストで座屈対策。

  • パーティング(合わせ面):鋳造後のバリ削減=後工程コストを直撃。早期検討が吉✍️


4|湯道・押湯(ランナー&ライザー)設計:欠陥の8割はここで決まる

  • 湯口位置静かに満たす(サブゲートやチョークで流速制御)。

  • 上昇充填で巻き込み気泡を回避。

  • 押湯熱節(ホットスポット)へ給湯が届く配置。保温スリーブや発熱ライザーで凝固末端を制御。

  • チョーク断面:乱流化を抑え、酸化膜(フィルム)巻込みを最小化。

  • フィルタ:酸化物・スラッジ除去に有効(圧損と充填時間のバランス)。

実務の裏ワザ:“欠陥位置=凝固末端”ではない場合がある。湯回り&ガス経路の再現をCAEか透明樹脂モデルで検証


5|溶解・取鍋・脱ガス・精錬:金属の“清浄度”を守る

  • 溶解炉(反射炉・保持炉・電気炉):温度の二段階管理(溶解→保持)で酸化/吸水素を抑制。

  • 脱ガス:ロータリーデガッサー+Ar/窒素吹込み、水素量PoD/減圧法で測定。

  • 精錬剤:フラックスで非金属介在物を凝集。

  • 粒子微細化Ti-B系で結晶微細化、SrでAl-Si共晶の改良。

  • 取鍋管理スラグすくい流出部の酸化膜切替を徹底。取鍋・注湯杓の予熱も忘れずに。

“良い湯”の定義=温度(±5〜10℃)×清浄度(低H)×酸化膜最小温度計の校正履歴を必ず残す


6|注湯・凝固・押湯切れ:秒で結果が変わる⏱️

  • 注湯速度:遅すぎ→コールドシャット、速すぎ→巻込み。

  • 余熱:寒い季節・大型鋳型は型温UPで初期凝固を安定化。

  • 押湯観察沈み量温度減衰で給湯継続性を評価。

  • 冷却・ばらし:時期尚早は熱割れ、遅すぎは生産性ダウン。品種ごとに標準時間を設定。


7|仕上げ・熱処理・機械加工:全体最適の視点で

  • ショット/ブラスト:表面清掃と梨地の統一。

  • ゲート・ばり除去:後加工面のダメージを回避する刃具選定。

  • 熱処理:Al-Si系はT6(溶体化→焼戻し)で強度UP、Al-Mg系は析出硬化で靭性向上。

  • 機械加工基準面→穴→タップの順。鋳造ひけや残留砂に注意。クーラント給水と切粉排出を重視。


8|欠陥図鑑と対策(保存版)‍

  • ピンホール:水素・砂の水分・被膜反応→脱ガス強化/含水率管理/塗型改良

  • 引け巣:給湯不足・押湯不足→押湯設計/発熱保温/肉盗み

  • 湯じわ/コールドシャット:充填遅れ→注湯速度/型温/ゲート変更

  • 酸化膜巻込み:乱流→落とし湯禁止/チョーク設計/フィルタ

  • 砂落ち/砂かみ:砂強度不足→砂管理/塗型/振動

  • 熱割れ:拘束+急冷→R付与/冷却制御/後熱

X線・断面・密度測定で“見える化”。欠陥地図を作って設計へフィードバック


9|歩留まり10%向上の“型”

  1. 砂の日次QC(圧縮強度・含水・透気・GFN・LOI)を看板化

  2. 湯道・押湯の標準ライブラリ化(製品カテゴリ別)

  3. 脱ガスログ×欠陥率の相関を月次レビュー

  4. 温度ガン+データロガで注湯温度のバラツキを±8℃以内

  5. 仕上げ不良の再発見える化(作業者ではなく部位で管理)

  6. “欠陥→設計変更”の回路を最短化(CAE/3Dモデル即修正)


10|安全・環境・DX

  • 安全:溶湯飛散・高温・粉じん・騒音。PPE(フェイスシールド/耐熱手袋/耐熱靴)と注湯立ち位置の標準化。

  • 環境:回帰砂の再生、バインダー発煙対策、溶解炉の省エネ燃焼

  • DXIoT温度計・振動センサで炉&ミキサーを予知保全、SPCで寸法&強度を統計管理。画像AIでばり・巣の自動検出も有効。


11|まとめ

砂型アルミ鋳造は砂×湯×時間の“微差の戦い”。砂管理・湯道設計・清浄度・温度・押湯・標準化の6点を回せば、歩留まりと品質は必ず伸びます。まずは**「砂QCの見える化」「湯道の標準テンプレ化」**から始めてみましょう。今日の1枚のQC表が、来月の不良率を半減させます。✨

 

 

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第21回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~ニーズ~

“砂と溶湯で設計を実装する”現場力

砂型アルミ鋳造は、複雑形状・中空・一体化を短リードで形にできる、自由度の高いモノづくりです。EV化・軽量化・少量多品種・環境要請が重なる今、発注側のニーズはかつてなく多様で厳密。一方で、欠陥ゼロの鋳肌が金型から外れた瞬間や、CAEの仮説が現物で証明できた瞬間に宿る“やりがい”は、この仕事の特権です。本稿では、いま求められるニーズを実務視点で整理し、砂型鋳造ならではのやりがい、現場で使えるチェックリストと90日アクションまで一気にまとめます。


1|いま発注側が鋳造に求める「10のニーズ」

  1. 内部健全性の保証
     ピンホール・巻き込み・引け巣の抑制を工程設計+検査(X線/CT)+トレースで“言える化”。

  2. 寸法安定・再現性
     収縮見込み・仕上代・基準面の拘束をCAE+CMM/3Dスキャンでロット間のバラつきを圧縮。

  3. 短納期・小ロット対応
     木型レスの3Dプリント砂型やモジュール中子で試作〜量産立上げを高速化。

  4. 薄肉・一体化・中空
     ゲーティング/押湯の最適化、真空補助やチルで充填性と凝固順序を作り込む。

  5. 鋳造性×機械特性の両立
     合金(例:Al-Si-Mg系)、熱処理(T6)、金属組織のターゲット管理(Si形態、Fe相)。

  6. 機械加工性の設計
     基準面・掴み代・工具逃げ・クーラント溝など加工前提の鋳造設計。

  7. 表面品質・漏れ保証
     漏れ試験(エアリーク/ヘリウム)、浸透探傷、ショット条件の再現性。

  8. コストと歩留まり
     湯道・押湯の最適化→歩留まりUP、二次加工工数・仕上代の最小化でトータル原価を下げる。

  9. 環境・安全(ESG)
     砂再生率、VOC削減、エネルギー原単位、粉じん(シリカ)対策の見える化。

  10. データ接続
     CAD→CAE→造型→検査→台帳のデジタルスレッドで変更追従と監査対応を高速に。


2|この仕事の“やりがい”——8つの瞬間

  1. 欠陥の因果をほどけたとき
     CTの不良マップとCAEの自由表面乱流がピタッと重なり、湯道修正で一発改善できたときの快感。

  2. 難形状が“鋳物ならでは”で解決
     溶接や組立では難しい一体化を、砂と中子でシンプルに実装。設計者の「助かった」が直に届く。

  3. リードタイムを縮めて市場に間に合わせた
     3Dプリント砂型で試作10日短縮。量産受注や顧客の新製品発売に貢献できる手応え。

  4. 鋳肌が語る
     ショットを終えた瞬間の均一な肌と角の張り。工程設計が正しかったと証明される。

  5. 歩留まりが数字で上がる
     歩留まり+8pt、スクラップ−50%。原価が動くのを目で見られる喜び。

  6. 多職種で勝つ
     設計・CAE・造型・溶解・仕上・検査が同じ一枚図で噛み合い、手戻りゼロで流れた日。

  7. 匠の勘を仕組みにできた
     “ここにチル”“ここでベント”という暗黙知を標準テンプレとSOPに落として、誰でも再現できるように。

  8. 環境・安全の誇り
     VOC・粉じん・灼熱の現場で、安全・環境を守り切る運用を回せたときの静かな誇り。


3|発注者別「ニーズの翻訳」早見表

  • 設計・開発:形状自由度・試作速度・内部健全性(CT)・CAE対話。

  • 調達・原価:歩留まり・加工工数・不良率・リードタイム・代替性。

  • 品質保証:検査基準、判定等級、トレース、是正の再発防止。

  • ESG/監査:砂再生率、VOC/CO₂、粉じん・安全、LCA情報。


4|“そのまま出せる”サービス・パッケージ

  • 試作スプリント(最短立上げ)
    3D砂型+簡易治具+初回CT→CAEへ即リプレイ→2週で形状・湯道FIX

  • 内部健全性保証パック
    充填/凝固CAE→ゲーティング設計→CT/漏れ試験→不良マップ添付の出荷証跡

  • 加工同時設計パック
    基準面・掴み代・工具逃げのテンプレ提示→仕上代最小化→加工サイクル短縮

  • ESG可視化パック
    砂再生率・VOC・電力原単位・再生アルミ比率を品番別ダッシュボードで提示。


5|現場で効くチェックリスト

砂・中子

  • 粒度・含水・通気・圧縮強度のSPC

  • 中子ベント位置と断面積の標準化

  • 砂再生比率/新品補給の最適点

溶湯

  • 水素量・温度・保持時間の基準票

  • フィルタ・フラックスのロット管理

  • 取鍋予熱・内面清浄度

型・注湯

  • ゲート・押湯・チルのテンプレ適用

  • 自動注湯の流量プロファイル確認

  • 真空補助・ベントの効き点検

検査・台帳

  • CT/X線の判定等級と運用範囲

  • 不良マップ→CAE戻しの定着

  • 原単位(砂/合金/電力/ガス/時間)の品番集計


6|KPI

  • 歩留まり(%)/スクラップ率(%)

  • 内部欠陥率(CT判定)/漏れ不良率

  • 寸法一次合格率(CMM/3Dスキャン)

  • 試作リードタイム/設計変更リードタイム

  • VOC・粉じん・CO₂原単位/砂再生率

  • 労災・ヒヤリハット件数/SOP順守率


7|ショートケース

A|薄肉ハウジングの巻き込み減

  • 介入:自由表面乱流を下げる湯道再設計+注湯流量の二段プロファイル。

  • 結果:CTで気孔−80%、歩留まり+6pt。

B|漏れ不良の再発防止

  • 介入:押湯位置移設+チル追加、熱いき過ぎ部に冷却補正。

  • 結果:リークゼロ更新、加工待ち在庫も解消。

C|ESGデータの可視化

  • 介入:砂再生ログと電力を品番紐付け、月次ダッシュボード化。

  • 結果:VOC−30%、受注入札で加点。


8|90日アクション

  1. 不良トップ3を“因果で”潰す
     CT不良マップ→CAE検証→湯道/押湯の一次改訂→1スプリント検証

  2. 基準票のA3化&掲示
     砂(粒度/含水/通気/強度)・溶湯(水素/温度/保持)・注湯(流量プロファイル)を一枚で見える化

  3. 加工前提の設計レビューを定例化
     週1で設計・加工・鋳造の三者会議。仕上代・基準面・掴み代を最初に決め、手戻りを半減。


結び

砂型アルミ鋳造の価値は、設計課題を“砂と溶湯の論理”で解く力にあります。
ニーズは厳しくても、欠陥の因果を断ち切る知恵と、数字で語れる再現性を積み上げれば、やりがいは確実に成果へつながる。

次のロットでは、因果で潰す/一枚で見せる/加工と同時に決めるの三手から。
砂の上に走る湯の道筋は、今日も工場の思想そのものです。

 

 

 

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第20回砂型アルミ鋳造雑学講座

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~変遷~

 

砂と溶湯で、設計思想とサプライチェーンを映し続ける産業

砂型アルミ鋳造は、もっとも“自由度”の高いものづくりです。複雑な空洞・一体成形・肉厚差・鋳ぐるみ…設計者の悩みを砂と溶湯で解決してきました。ところがこの70年、素材・設備・品質要求・環境規制・市場構造の変化を受けて、工場の中身は別物と言って良いほど進化しています。本稿では、年代別の流れ→プロセス技術→品質とデジタル→環境と人材→これからの順に、現場で役立つ視点で整理します。


1|年代別ダイジェスト:何がどう変わったか

① 戦後〜高度成長(1950–70s):職人技から量産へ

  • **木型+生型(グリーンサンド)**が主流。

  • 溶解は重油炉・ガス炉・反射炉が中心、合金はJIS系の汎用品。

  • 品質は破面観察・寸法ゲージが主で、欠陥解析は経験依存。

② 輸出拡大と自動車要求の高まり(1980–90s)

  • 化学硬化砂(フラン・フェノール樹脂)やコールドボックス中子が普及、薄肉・複雑形状に対応。

  • 溶湯処理にアルゴン脱ガス・ロータリーデガッサセラミックフィルタが導入。

  • 分光分析(OES)・水素量測定・X線が日常化。ISO 9001自動車規格が現場に入る。

③ グローバル調達と自動化(2000s)

  • CNC・3D CADで木型→アルミ型、治具の高精度化。

  • 自硬性砂の機械混練・再生ライン、造型機のサーボ化でバラツキ圧縮。

  • 溶解の電気化(抵抗炉・誘導炉)や自動注湯の採用が進む。

④ デジタル・環境・短納期の三重苦→三位一体(2010s)

  • **鋳造CAE(充填・凝固・欠陥予測)**が設計の標準ツールへ。

  • CTスキャン・画像解析で内部品質を“見える化”。

  • VOC・粉じん・CO₂への規制対応、砂再生・バインダ低VOC化が加速。

  • 少量多品種・試作短納期に**3Dプリント砂型(バインダジェット)**が登場。

⑤ いま(2020s〜):EV化・軽量化・データ連携

  • モータハウジング、インバータケース、バッテリートレイ等の大型薄肉化に対応。

  • デジタルスレッド(CAD→CAE→型→造型→検査→トレース)で手戻り最小化。

  • セカンダリーアルミの活用、LCA視点の取引が広がる。


2|プロセス技術の進化:砂・溶湯・金型・注湯

砂・中子

  • 生型(クレイ系):量産に強い。回収・再生の最適化で品質安定。

  • 自硬性砂(フラン/フェノール):大型・厚肉・寸法安定。VOC対策がカギ。

  • コールドボックス中子:複雑中空に強い。アミン対策・臭気管理は設備勝負。

  • 無機バインダ:低臭・低発煙。耐湿性と強度の両立がテーマ。

  • 3Dプリント砂型木型レスで最短納期。量産前試作や年次小ロットに効く。

溶解・溶湯処理

  • :反射炉→**ガス高効率炉・電気炉(抵抗・誘導)**へ。熱ロス可視化が定着。

  • 処理脱ガス(アルゴン/窒素)精錬フラックスフィルタリング

  • 成分管理:OESでその場調整、水素量監視でピンホール抑制。

ゲーティング・押湯設計

  • 職人の勘→CAEとモジュラス設計

  • チル・冷し金の適用、押湯スリーブ・カバーで歩留まりと健全性を両立。

注湯と固化

  • 自動注湯・流量制御で乱流最小化、酸化膜巻き込みを回避。

  • 真空補助・負圧で充填性向上、スクイズ併用で気孔減。


3|品質保証の変遷:破面と勘から、データと可視化へ

  • 受入/工程管理:OES(成分)、水素・温度・酸化膜指数のルーチン化。

  • 検査:X線→CT(3D内部欠陥)染色浸透・磁粉(鋼部鋳ぐるみ)寸法CMM・3Dスキャン

  • 工程統計:SPCで粒度・圧縮強度・含水・通気度を管理。

  • フィードバック:検査結果はCAEと不良マップに戻し、次回の湯道修正へ。


4|生産性と安全衛生:人を守り、歩留まりを上げる

  • 自動化:造型・中子セット・型バラシ・ショット・仕上げのセル化。

  • 人の負荷対策アシストスーツ・ハンドリングロボで腰・肩を守る。

  • 粉じん/シリカ:集塵・局排・保護具の標準化。

  • 溶湯災害:湿気・水分混入ゼロのルールと点呼、飛散防止床耐熱個装


5|環境とサステナ:砂・バインダ・エネルギー・アルミ

  • 砂再生:機械・熱処理の組合わせで回収率UP、廃棄量と購入量を双方向で削減。

  • 低VOC化:無機バインダ・低発煙スリーブ・**RTO(蓄熱式酸化炉)**等の導入。

  • エネルギー:炉の断熱・蓋管理・誘導炉の力率最適化

  • 原料リサイクル(セカンダリー)アルミの比率増、合金設計で機械特性と鋳造性の両立


6|市場の変化:軽量化・EV・小ロット化

  • 自動車:EVでケース・トレイの大型薄肉が増加、寸法安定と内部健全性の両立が必須。

  • 産機・インフラ:一体化・複雑化、試作短納期の要求が増。

  • 航空・ロボ:ポロシティ・介在物の厳格管理、トレーサビリティが勝負。


7|デジタルスレッド:設計から検査までを一本に

  • CAD→CAE→CAM→造型→検査→台帳をIDで連結。

  • 不良発生時は検査点群→CAEへリプレイ→ゲート修正→型データ即日更新

  • 原単位の見える化:砂・合金・ガス・電力・時間を品番別に集計し儲けの構造を把握。


8|ショートケース

A|薄肉箱物の巻き込み気孔を1/5に

  • 介入:CAEで自由表面乱流を低減する湯道再設計+自動注湯の流量プロファイル導入。

  • 結果:内部気孔率−80%、仕上げ工数−15%。

B|VOCを半減

  • 介入:中子を無機バインダへ、造型室に局所RTO

  • 結果:作業環境改善、近隣苦情ゼロ、CO₂も削減。

C|試作リードタイムを10日短縮

  • 介入:3Dプリント砂型+アルミ簡易治具、CTで初回合否判定→CAEへ即フィードバック。

  • 結果:試作〜量産移行が1スプリント短縮。


9|現場で効くチェックリスト

砂・中子

  • 粒度・含水・通気・強度のSPC管理

  • 中子ガス抜き位置/断面積の標準化

  • 砂再生比率と新品補給の最適点

溶湯

  • 水素量・温度・保持時間の基準票

  • フィルタ・フラックスのロット管理

  • 取鍋の予熱・清浄度点検

型・注湯

  • ゲート・押湯・チルの標準テンプレ

  • 注湯流量プロファイルのレシピ化

  • 真空補助・ベントの効き確認

検査・台帳

  • CT/X線の判定基準(欠陥等級)

  • 不良マップ→CAEへの戻し運用

  • 合金・砂・エネルギーの原単位を品番別に集計


10|これから5年の論点

  1. 3Dプリント砂型の常用化:試作だけでなく小ロット量産へ。造型コストと後処理の最適点。

  2. 無機バインダ×高機能中子:低臭・高強度・耐湿の三立。

  3. 低炭素アルミ調達:再生材比率や再エネ電力のLCAを価格に織り込む。

  4. インラインCT/AI判定:100%検査×自動判定で手離れ。

  5. デジタルスレッド完成:設計変更がその日の型データ・作業票に反映される“遅延ゼロ”の工場へ。


11|90日アクション

  1. 不良トップ3の“因果”をCAEで検証
     現物CT/X線→不良マップ→充填・凝固解析→湯道・押湯の一次修正。1サイクルで効果を数値化。

  2. 砂と溶湯の“基準票”を更新
     粒度・含水・通気、H₂・温度・保持時間の許容レンジと異常時対応をA3一枚に。現場掲示。

  3. LCAミニサーベイ
     合金(再生比)、燃料・電力、砂再生率の原単位を見える化。CO₂と原価の二軸で改善候補を抽出。


結び

砂型アルミ鋳造は、自由度と包容力を武器に、時代ごとの要求に応えてきました。
生型・自硬性・中子・3Dプリント、反射炉・電気炉、勘・CAE、破面・CT——どの時代でも要は同じ。**“健全で、寸法が出て、間に合う”**ことです。

次の現場では、CAEで因果を掴む/基準票をA3で運用する/原単位を見える化の三手から。
砂と溶湯の“当たり前”を磨き込むことが、これからの競争力になります。

 

 

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第19回砂型アルミ鋳造雑学講座

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~納品~

 

砂型アルミ鋳造は、小ロット/複雑形状/短納期に強い工法。ここでは、問い合わせから出荷までの標準フローを、意思決定の“関門(ゲート)”と提出物までセットで整理します。


0. 事前相談・RFQ(見積依頼)

入力:用途・希望数量(試作/量産)・合金種・熱処理・目標重量・要求精度・気密/強度の必達・表面処理・納期
出力:概算工法提案(砂型 or 3D砂型/ロストフォーム等)、概算リードタイム、NRE(型・治具費)の有無

コツ:“必須要件”と“代替可”を色分けして伝えると、最短で最適解に到達。


1. 図面・仕様すり合わせ(DfM)

  • 肉厚・抜き勾配・リブ比率・ボス周辺の鋳造性チェック

  • 機械加工基準面・重要寸法・面粗度・気密部の後工程要件確認

  • **CAE(流動・凝固)**の前提合意:押湯/湯口、冷却、ゲート位置

ゲート:仕様凍結(Spec Freeze)
提出物:提案図(加工代・R付与・ゲート跡位置)/成分・熱処理案


2. 見積・発注・キックオフ

  • 単価内訳:鋳造+熱処理+機械加工+表面処理+検査+梱包/輸送

  • 支給材/支給部品の有無、支給公差、責任分界点(設計変更・不適合の扱い)

ゲート:PO発行/基本契約・品質協定
提出物:納期計画(ガント)、品質計画(Control Plan/検査項目表)


3. 型・方法設計(Methoding)

  • 砂型:模型/中子箱設計、場合により3Dプリント砂型採用

  • CAEで引け・巣・熱たまりを事前潰し

  • 治具(加工・検査・リーク試験)設計

ゲート:方法承認(Method Approval)
提出物:CAEレポート、ゲート・押湯計画、治具図


4. 試作鋳込(T0〜T1)

工程:溶解→温度/化学成分管理→注湯→シェイクアウト→ショット→熱処理(T5/T6等)→粗加工(必要時)
検査:光分析・硬さ、寸法(CMM)、X線/CT(必要時)、リーク試験(気密品)

ゲート:初品承認(FAI/ISIR)
提出物:初品検査成績書、材質証明(ヒートNo.)、熱処理チャート、外観判定基準

ここでゲート跡位置や面粗度・加工代を最終確定。必要ならT2で微修正。


5. 量産立上げ

  • 砂再生率・含水率・型強度の工程能力を確認

  • 溶湯管理(温度・金属清浄度)とトレーサビリティ(溶解ロット⇔製品)確立

  • **作業標準(写真付き)**を整備、出来形・不適合のフィードバックループ構築

ゲート:量産移行承認(SOP)
提出物:QC工程表、作業標準、検査治具リスト、初期フル検査報告


6. 機械加工・表面処理

  • 基準面→重要穴→仕上げの段取り最適化

  • 表面:ショット/ブラスト→塗装・化成処理・アルマイト(仕様に応じて)

検査:重要寸法全数/抜取、面粗度、外観、必要に応じ耐圧・導通


7. 最終検査・梱包・出荷

  • 合格票貼付、ロット・ヒートNo.・処理チャート添付

  • 梱包:傷・打痕対策、乾燥剤/防錆紙(必要時)、姿勢指定

  • 輸送:納入条件(直送/一時保管)、納入先別ラベリング

提出物(納品書類例)

  • 検査成績書(寸法・外観・機能)

  • 材質証明(ミルシート/成分表)

  • 熱処理履歴(炉チャート)

  • NDT/X線レポート(要求時)

  • リーク試験成績(要求時)


代表的なリードタイム目安

  • 3Dプリント砂型ルート:設計凍結後 2〜3週で初品 → 承認後 1〜2週で量産

  • 従来模型ルート:型・中子箱製作 2〜4週 → 初品 +1週 → 量産 +1〜2週
    ※形状・数量・外注(表面/機械)負荷で変動


よくあるつまずき&回避策

  • 肉厚差が大きい → 段差緩和、フィレットR追加、冷却補助を設計段階で承認

  • 気密不良 → 中子接合・砂質・湯道見直し+リーク治具で100%検査開始

  • 加工歪み → 基準面とクランプ位置を設計で明示、熱処理後の時効安定を考慮

  • ゲート跡が目立つ → 跡位置の合意、仕上げ工程に面取り/研磨を組込み


発注側チェックリスト(保存版)

  1. 用途・荷重・必達性能(気密/強度/寸法)

  2. 数量レンジ(試作→量産の見込み)と将来の拡張性

  3. 合金・熱処理・表面仕様(代替可の範囲も記載)

  4. 図面の加工基準・重要寸法・粗さ・検査方法

  5. CAE/試作回数・承認基準(FAI/ISIR)

  6. 梱包形態・ラベル様式・納入条件


砂型アルミ鋳造の要は、「前工程の合意密度」×「初品での基準作り」
DfMとCAEで“作れる図面”に整え、初品で合意した基準を量産へブレなく展開する。これだけで、品質・納期・コストの三方良しがぐっと近づきます。

 

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第19回砂型アルミ鋳造雑学講座

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~製品~

 

砂型アルミ鋳造は、初期型費が低く、形状自由度が高いことから、試作~少量生産で長く選ばれてきた工法です。近年はEV・ロボット・ドローン・アウトドアギアまで用途が拡大し、“つくれるもの”の幅が一気に広がっています。本稿では、その多様化の方向性と設計・発注のコツをコンパクトに整理します。


なぜ今、多様化が進むのか

  • 需要の細分化:カスタム機械、ニッチ産業、アフターマーケット部品が増加

  • 短納期化:サプライチェーン変動で“今すぐ欲しい”が常態化

  • 設計自由度の向上:3Dプリント砂型や流動・凝固シミュレーションの普及

  • リプレース需要:廃番金型・旧車/産機の補修部品を少量で再生産


多様化の具体像(プロダクト×技術)

1) 用途領域の拡張

  • 産業機械/ロボット:アーム・ジョイント、軽量ブラケット、減速機ハウジング

  • モビリティ/EV:インバータ・バッテリー筐体、冷却プレート、軽量サス部品

  • ドローン/映像機器:ジンバルアーム、ヒートシンク一体筐体

  • 医療・ラボ機器:ポンプボディ、クリーン対応ハウジング

  • 建築・アウトドア:デザイン金具、軽量コンロボディ、ランタンフレーム

  • レストア/文化財:旧車・古機械の鋳物再生、装飾パーツ

2) 形状・機能の進化

  • 薄肉化&一体化:リブ設計で剛性確保、溶接・ボルト点数を統合

  • 内部流路/冷却:中子設計やAM中子で複雑水路を実現、放熱フィンの一体化

  • 軽量・高剛性:トポロジー最適化の“有機形状”を砂型で具現化

  • シール・防水設計:Oリング溝やボスを鋳肌+機械加工で高精度化

3) 材料・熱処理・表面

  • 代表的合金:Al-Si-Mg系(例:AC4系)=鋳造性・機械性のバランス、Al-Mg系(例:AC7系)=耐食性

  • 熱処理:T5/T6で強度・靱性・寸法安定を最適化

  • 表面:ショット・サンドブラスト→塗装/アルマイト、導電・放熱向けの化成処理

4) 成形プロセスの多様化

  • 3Dプリント砂型(バインダジェット):コア含め型レスで超短納期・複雑形状

  • ロストフォーム/発泡模型:一品物の大型化対応

  • ハイブリッド:砂型近似形→CNC仕上げ→アッセンブリ、インサート鋳込み


事例でイメージ(要点)

  • EV用冷却プレート:薄肉板+微細水路をAM中子で実現。鋳放し→面研→リーク試験まで一気通貫。

  • ドローン用ジンバルアーム:トポロジー最適化形状を砂型で少量量産。剛性同等で30%軽量化

  • 旧車の水ポンプハウジング:現物3Dスキャン→鋳造→機械加工→表面処理まで再生。供給停止部品の“救済策”に。


設計(DfM)の勘所

  • 肉厚均一:急激な厚薄差は引け・巣の原因。段階変化+フィレットRを。

  • 抜き勾配・コーナーR:抜き1°以上、内外角は応力集中を避けるRを基本に。

  • リブ設計:板厚の0.5~0.8倍を目安に剛性アップ、熱だまりを避ける孔あけも検討。

  • ボス/ねじ座:鋳放し位置決め→機械加工で精度確保。座面の面圧・ガスケットも設計時に想定。

  • 基準面の先決め:後加工のチャッキング基準を図面で明示するとリピート精度が上がる。

  • シミュレーション前提:湯口・押湯・冷却をCAEで擦り合わせ、初回から良率を高める。


コストと納期の考え方(ざっくり指針)

  • 1~100個/回:砂型が最有力。3D砂型で型費を最小化し2~3週間規模の立上げも現実的。

  • 100~1000個/回:砂型×治具の再利用で単価最適化。将来量が読めるなら金型への段階移行も視野。

  • 価格構成:型費(3D砂型は低減)+鋳造+熱処理+機械加工+表面処理+検査。設計の素直さが最強のコストダウン。


品質・検査の多様化

  • X線/CT:内部欠陥の可視化、軽量化設計の裏付け

  • リーク試験・圧力試験:流体系部品の信頼性担保

  • 三次元測定・スキャン:意匠部品やレストアの形状保証

  • トレーサビリティ:溶解ロット、砂再生率、温度履歴の記録で安定生産


サステナブル対応

  • 再生アルミの活用砂の再生循環、低VOCのバインダ選定などで環境負荷を低減。ESG調達要件にも適合しやすい。


発注チェックリスト(保存版)

  1. 用途・荷重・目標重量(“なぜアルミ鋳物か”を共有)

  2. 数量・繰り返し頻度・希望納期(最適工法の分岐点)

  3. 材質・熱処理・表面仕様(代替案の余地を残す)

  4. 重要寸法と後加工基準(“ここだけは加工”を明記)

  5. 気密性や強度の必達条件(試験方法と合否判定)

  6. 将来の増産シナリオ(治具・型の拡張設計)


砂型アルミ鋳造は、多品種少量・短納期・高自由度という時代要請に最もフィットする工法です。3D砂型やCAE、後加工の一気通貫体制を組み合わせれば、試作だけでなく少量量産の主役にもなり得ます。設計段階から鋳造側と“目的・必達条件”をすり合わせ、軽く・強く・早い鋳物づくりで市場機会を取りにいきましょう。

 

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第18回砂型アルミ鋳造雑学講座

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~経済的役割~

 

砂型アルミ鋳造は、長年にわたり日本のものづくりを支えてきた重要な加工技術のひとつです。特に試作開発や多品種少量生産に強く、自動車・航空機・産業機械・建築部材など多様な分野に部品を供給しています。

一見するとニッチな産業に思えるかもしれませんが、この産業は日本の経済と地域社会を陰で支える存在です。「砂型アルミ鋳造業が果たす経済的役割」について、サプライチェーン・雇用・中小企業の活性・技術革新・地域産業の視点から深くご紹介します。


1. 基幹産業への部品供給という“縁の下の力持ち”

砂型鋳造は、1個からの試作や少量生産が得意であり、量産前のプロトタイプや高精度が求められる機械部品に多く使われています。

● 主要供給先の例

  • 自動車産業:エンジン部品、ケース、ブラケットなど

  • 航空・宇宙産業:軽量化された複雑形状部品

  • エネルギー・発電設備:タービンハウジング、配管ジョイントなど

このように、砂型アルミ鋳造は日本の輸出型産業に不可欠な“基盤部品”を供給しており、最終製品の競争力に直結する重要な役割を担っています。


2. 中小企業による地域雇用と技術の継承

砂型鋳造業の多くは地域に根ざした中小企業によって支えられています。これらの企業は大企業のサプライチェーンの一端を担いながら、地域雇用や人材育成にも大きく貢献しています。

● 地域経済における役割

  • 熟練工による技能継承と若手技術者の育成

  • 地元の人材を積極採用し、雇用の受け皿に

  • 地場企業・学校との連携による地域内技術教育の促進

これにより、砂型アルミ鋳造業は単なる工業分野にとどまらず、“技術と人の資産”として地域の活力を育む存在となっています。


3. 多品種・小ロット需要への対応力=経済の柔軟性の支え

大量生産型の鋳造とは異なり、砂型アルミ鋳造は多品種・小ロット生産に極めて適した製法であり、製造業の柔軟性を高めるうえで欠かせません。

● 経済的な意味合い

  • 開発スピードを加速し、製品競争力を高める

  • 市場ニーズの多様化(カスタム化・個別化)に対応

  • 小ロット対応が可能なため、初期投資リスクが低く新規事業を後押し

この柔軟性が、中小メーカーやベンチャー企業の参入障壁を下げ、新産業の芽を育てる土壌になっています。


4. 環境・リサイクル面での経済的貢献

アルミニウムは軽量・リサイクル性の高い金属であり、環境負荷低減の観点からも注目されています。砂型鋳造業はこれを活かし、環境型製造業としての経済価値を発揮しています。

● サステナブル経済への寄与

  • 再生アルミ(スクラップ)を活用することで原材料コストとCO₂排出を同時削減

  • 鋳造時の使用砂の再利用システム導入による廃棄物削減

  • 脱炭素化が求められるなか、エネルギー効率のよい生産体制を推進

このように、砂型アルミ鋳造業は環境と経済の両立を図る製造基盤として重要なポジションを担っています。


5. 技術集約産業としての価値創出

砂型鋳造は一見シンプルな技術に見えますが、製品精度・寸法精度・材質制御・凝固挙動の予測など、職人技とシミュレーション技術の融合が求められます。

● 付加価値の創出

  • 3D CAD・CAE・鋳造シミュレーションの導入による高付加価値化

  • 手作業による型づくり技術による一点ものの開発支援

  • 難易度の高い形状や薄肉部品における加工コスト削減への貢献

これにより、砂型アルミ鋳造業は「安くて簡単な製法」ではなく、“高機能部品を最適コストで提供できる”技術集約型産業として、製造業全体の競争力を支えています。


まとめ|砂型アルミ鋳造業は「静かなる成長エンジン」

砂型アルミ鋳造業は、地味ながらも日本経済にとって不可欠な産業です。

  • 基幹製造業への部品供給による産業支援

  • 地域中小企業による雇用と技術の継承

  • 多品種少量対応力による開発支援と経済柔軟性の確保

  • リサイクルと環境負荷低減による持続可能性の追求

  • 熟練技術とデジタル融合による付加価値創造

このように、砂型アルミ鋳造は、「目立たないが不可欠な存在」として、日本の製造業の質と多様性を支え続ける“静かな経済のエンジン”と言えるでしょう。

 

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第17回砂型アルミ鋳造雑学講座

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~多様化~

 

砂型アルミ鋳造は、古くから続く伝統的な金属加工法の一つです。しかし現代においては、その技術領域はかつての単なる“モノづくり”にとどまらず、設計・材料・用途・サービス形態など、さまざまな側面で多様化が進んでいます

砂型アルミ鋳造業における「多様化」がどのように現れ、どんなニーズに応えているのかを、以下の5つの観点から掘り下げて解説します。


1. 製品用途の多様化:試作品から小ロット量産まで対応

かつての砂型鋳造は、主に中小規模の工業部品や大型製品用とされていましたが、近年では自動車・航空・医療・エネルギー分野まで製品用途が拡大しています。

● 用途別のニーズ

  • 試作部品:金型不要のため、開発初期の1個から対応可能

  • 多品種小ロット生産:仕様変更にも柔軟に対応できるため、少量多品種に適する

  • デザイン系鋳物:建築装飾や美術鋳物など、意匠性を重視する用途にも進出

このように、砂型鋳造はニッチでありながら高度な要求に応える“自由度の高い成形法”として再評価されています。


2. 材料・合金の多様化:軽量化・耐熱性・高強度化への対応

近年、製品の高性能化が進む中で、使用されるアルミ合金の種類も多様化しています。

● 取り扱い材料の変化

  • 高耐熱型アルミ合金(自動車エンジン・EV用部品など)

  • 高強度・高靭性アルミ(機械構造部品や航空機向け)

  • リサイクルアルミの活用による環境対応型鋳造

これにより、砂型鋳造業者には材料知識と熱処理・金属組織制御技術が求められる高度化が進んでおり、鋳造=低コスト・簡易というイメージを超えた専門性の高い技術領域となっています。


3. 設計と製造の融合:3D CAD・3Dプリンターの導入

設計技術の革新により、砂型鋳造業もデジタル化が進行中です。

● デジタル技術の取り込み

  • 3D CADによる鋳型設計とシミュレーション解析

  • 3Dプリンターを用いた鋳型(砂型)製造技術

  • 鋳造不良の予測・流動解析による歩留まり向上

これにより、砂型鋳造業者は設計から製造、品質保証まで一貫対応する“エンジニアリング型鋳造業者”として、多様なニーズに応えられる体制へと進化しています。


4. 業務形態の多様化:OEM・ODM・エンジニアリング受託へ

従来は「図面通りに鋳物をつくる」業務が中心でしたが、今ではその枠を超えて、上流設計から製品化支援まで行う企業が増えています。

● 新しい業務スタイル

  • OEM/ODM供給:顧客ブランド製品の代行生産や設計支援

  • 開発段階からの共同設計:開発試作〜製品化までの一貫体制

  • 鋳物+加工+表面処理の一括提供

こうした動きにより、砂型鋳造業は単なる加工業者ではなく、ものづくりプロジェクトの“パートナー企業”としての位置づけを確立しつつあります。


5. 環境・持続可能性への対応:リサイクルと省エネルギーの追求

環境意識の高まりにより、アルミ鋳造業も脱炭素・省エネ・廃材削減への対応が求められています。

● サステナブル対応の例

  • 再生アルミ地金の利用によるCO₂削減

  • 鋳造時の排ガス抑制技術の導入

  • 廃砂のリサイクルやゼロエミッションへの取り組み

砂型鋳造は、材料ロスが比較的少なくリユース性が高いという点でも、今後の環境型製造業としての可能性が注目されています。


“型”にとらわれない砂型アルミ鋳造の未来

砂型アルミ鋳造業は、古くからの製法を基盤にしながらも、

  • 多分野対応の製品多様化

  • 高機能合金の材料多様化

  • 設計・試作段階までを含む業務範囲の多様化

  • デジタル化による製造プロセスの多様化

  • サステナブル対応の社会的役割の多様化

という形で、多面的な進化を遂げています。

今後も砂型アルミ鋳造業は、「一点もののものづくり」「短納期・高精度」「試作開発型製造」など、量産にはない価値を提供する重要な存在として、国内外でその地位を確立していくことでしょう。

 

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第16回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

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本日は第16回砂型アルミ鋳造雑学講座!

今回は、砂型アルミ鋳造業における“一人前”の職人になるまでの道のりを、具体的な作業ステップと心の成長段階に分けて詳しく解説します。

 

高温のアルミを砂型に流し込み、精密な金属部品を造り上げる伝統と革新の職人技の世界です。この現場では、温度・形状・時間すべてに“勘と技術”が求められ、簡単には機械化できない手仕事が今も重要視されています。


1. 【見習い期】まずは「砂と火に慣れる」

■ 主な作業内容

  • 使用済み型のバラシ・砂型の再生作業

  • 器具洗浄、型枠清掃、材料運搬などの補助

■ 学びの視点

  • 湿度と砂の硬さの関係を「手で覚える」

  • アルミの流動性と冷却特性を「目で感じる」

🔑 キーワード:観察と反復

職人の世界は「見て覚える」が基本。まずは安全と流れを体に染み込ませます。


2. 【初級期】型づくりの基本動作を習得

■ 中子・鋳型製作の入門

  • 型枠の組立、離型剤の塗布、注湯口・湯道の整形

  • 木型や金型の扱いと修正技術の理解

■ 鋳造作業の補助

  • 溶解炉の温度確認、アルミの撹拌、スラグ除去

  • 注湯時の助手(安全確認・型の支え)

🔧 成長指標:「一つの型を自分で完成させられる」


3. 【中堅期】鋳造の全工程を把握し、判断力を鍛える

■ 一通りの工程を担当

  • 鋳型設計から中子配置、注湯・冷却までの主担当を任される

  • 湯流れ不良・鋳巣・割れなど不具合に対応

■ 修正力・応用力が鍵

  • 型のくせや製品による冷却速度の違いを考慮した「流し方の工夫」

  • シーズンごとの砂の湿度・気温変化への微調整

📌 成長の証:「異常が起きる前に“予測できる”力を持つ」


4. 【一人前期】設計図を読み取り“品質を自分の目で保証”できる段階へ

■ 求められる総合力

  • 3D図面・鋳造図の読解力

  • 材質特性や熱処理工程の知識

  • 他職種(機械加工、検査、営業)との連携能力

■ 自身が“製品品質の最後の砦”となる自覚

  • 型を作る前に設計ミスを見抜く

  • 鋳造不良を起こさないための段取り設計

  • 新人教育や現場改善提案も担う

🏅 真の一人前とは?

「この型は○○さんがやるなら安心」と言われる技術と信頼が伴った状態です。


5. 一人前になるまでの期間と乗り越える壁

段階 平均期間 主な課題
見習い期 0〜6か月 安全意識・用語習得
初級期 1年程度 作業精度・反復力
中堅期 2〜3年 判断力・不具合対応力
一人前 5年〜 自律・育成・改善視点

🔔 最大の壁は「見て盗む」文化への適応力と、自ら考える習慣の獲得です。


おわりに

砂型アルミ鋳造業における一人前とは、高温と砂の中に“品質を形づくる”感覚を持った熟練技術者であること。そして、技をつなぎ、現場を支え、未来を築く責任を自覚する人材でもあります。

効率やデジタル化が進む中でも、この現場の“職人力”は決して失われることはありません。

 

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第15回砂型アルミ鋳造雑学講座

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本日は第15回砂型アルミ鋳造雑学講座!

今回は、砂型アルミ鋳造における3D図面の具体的なメリットや導入の注意点、現場活用事例を詳しくご紹介します。

 

砂型鋳造はその柔軟性から自動車部品や建築金物など様々な業界で使われてきました。しかし従来の2D図面では、寸法や形状への誤解・加工指示の曖昧さが発生しやすく、トライアル回数やリードタイムが増える要因となってきました。そこで導入が進められているのが、「3D図面(3D CAD/3Dモデリング)」を使った設計と現場展開です。


1. 砂型鋳造における3D図面導入の背景とメリット

■ 従来の2D図面の課題

  • 断面や寸法指示が複数ページにまたがることで、読み違いや誤指示が発生しやすい

  • 複雑形状の場合、2Dでは断面想像が難しく、加工ミスや鋳巣の原因に

■ 3D図面導入で得られる主なメリット

項目 効果
納まり確認 コア割や合い口の配置を立体で事前にチェック
量産品質向上 不具合箇所(冷却困難部、肉厚の急変部)を3Dで早期に発見
作業者との共通理解 職人から鋳造技師まで「見て分かる」図面で指示の齟齬が減少
鋳型設計の効率化 自動生成や修正時の3D変更により、型設計時間を短縮

2. 実際の鋳造プロセスにおける活用ポイント

「コア・合わせ口の設計」

3Dモデル上で中子の配置や合わせ口の形状を立体的に把握。熱流れの検討だけでなく、製造作業時の鋳型割りや中子抜けの具合も検証しやすくなります。

「冷却ラインと肉厚評価」

アルミは冷却速度で強度や気泡リスクが変わるため、肉厚変動箇所を可視化することで冷却剤経路や砂の保湿性を最適化できます。

「鋳巣・欠陥予測」

3Dで肉厚バランスを確認したうえで、CAE解析と組み合わせ、鋳巣が起きやすい場所を事前に察知・対策を講じることが可能です。


3. 現場導入の課題とその乗り越え方

■ ソフトとスキルの習得

3Dソフト(SolidWorks、Creo、Fusion360など)は導入コストが高く、操作教育の時間も必要。
外部専門者との連携や、業務フローの段階的な3D化が有効です。

■ 製造現場とのデータ連携

現場で使える図面はPDF化した3D断面図や簡易なMBD(Model-Based Definition)出力で、紙でも理解できる手段に変換することが重要です。

■ レガシーとの共存

古い2D図面資産との整合性を保つため、2D/3Dの併用運用ルールを明示することで混乱を避けやすくなります。


4. 現場成功事例:3D図導入で改善されたケース

  • 案件A(自動車部品メーカー):誤組立防止により合型ミスが50%削減、試作回数も半減。

  • 案件B(建築金物鋳造):冷却不良部位を3Dで特定し、成形砂と中子配管の改良で鋳巣トラブルが30%減少。

  • 案件C(鋳型メーカー):金型社内製造に3D図面・3Dプリンター連携で型製作リードタイムを数週間短縮。


5. 3D図活用の次段階:AI設計支援やデジタルツイン

今後は、AIによる肉厚バランスや冷却ライン設計の最適化支援や、鋳型・完成品のデジタルツイン構築により、リモート検証・改善プロセスが現実的になるでしょう。

中でも「砂温度や硬さを予測するセンサーと3Dモデル連動」は、リアルタイム品質管理への扉を開きます。


おわりに

砂型アルミ鋳造は、鋳造技術とデジタル技術の融合により、従来の職人技だけでは到達できなかった次元へ進化しています。3D図面の採用は、エラー低減・品質向上・リードタイム短縮・技術伝承という一石四鳥の効果をもたらします。

導入に踏み出すにはハードルもありますが、その先にある『現場で安心して使えるモデルの安定供給』は、より豊かな未来を築く鍵となるでしょう。

 

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第14回砂型アルミ鋳造雑学講座

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今回は、鋳造図面確認時にチェックすべポイントと、特に注意すべ落とし穴についてしく解説ます。

 

砂型アルミ鋳造は、設計図面模型つくり、鋳型製作金属流し込む工程です。図面読み取りミス落としは、鋳造欠陥納期遅延、製作原因となります。そのため、鋳造として図面正確読み、必要補正仕様見抜くチェック極めて重要です。


1. 図面チェック目的は“図面ままない”こと

鋳造固まる工程上、収縮・変形・回り不良など特性ます。つまり、設計通りそのまま作るではなく、鋳造特性加味した補正必要です。

図面チェックは、単なる確認作業ではなく、この図面鋳造どう具現するか」設計視点+製造視点見極める行為です。


2. 図面チェック項目一覧

項目 内容 チェックポイント
寸法精度 公差・寸法 機械加工寸法か?鋳物として実現可能性
収縮補正 材質補正 アルミ合金ごと異なる収縮補正反映
加工余裕 設定 必要寸法加工後に残るよう設計いるか
抜き勾配 引き抜き方向角度 垂直に対し最小1〜程度角度ある
厚・ 最小厚/均一 薄肉すぎる・均一鋳造不良原因
形状 中空部・配置 方向・支持位置・固定方法検討
表面仕上げ記号 要求/加工有無 加工範囲明確区別すること
ロット・材質情報 材種・熱処理指示 A356-T6など、仕様鋳造条件確認

3. 特に注意すべポイントトラブル

⚠️ 抜き方向考慮ていない設計

から破損、製品形状崩れる

⚠️ 加工余裕記載漏れ

機械加工後に寸法不足し、製品としてNG

⚠️ 急激断面変化(差)

収縮応力凝固遅れにより、引け割れ発生

⚠️ 鋳造記号機械加工記号混在

加工不要部分までってしまい、製作


4. 図面確認ため実践工夫

  • チェックリスト運用図面確認標準項目にし一括管理

  • 過去トラブルフィードバック反映失敗マニュアル注意喚起

  • 製造現場クロスチェック製図担当・製造担当図面一緒確認する

さらに、3D CAD鋳造シミュレーション(流れ・凝固解析)連携することで、図面情報立体理解可能なり、不良予測精度向上ます。


図面読む力」が“鋳物品質”決める

砂型アルミ鋳造現場では、図面一文、寸法落とし製品成否左右ます。そのため、「設計意図読み取り、鋳造現場目線補正できる力」こそプロ鋳造として求められるスキルです。

読みない目”と“づける目”持つことが、品質鋳物支える第一歩です。

 

 

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