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第20回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

~変遷~

 

砂と溶湯で、設計思想とサプライチェーンを映し続ける産業

砂型アルミ鋳造は、もっとも“自由度”の高いものづくりです。複雑な空洞・一体成形・肉厚差・鋳ぐるみ…設計者の悩みを砂と溶湯で解決してきました。ところがこの70年、素材・設備・品質要求・環境規制・市場構造の変化を受けて、工場の中身は別物と言って良いほど進化しています。本稿では、年代別の流れ→プロセス技術→品質とデジタル→環境と人材→これからの順に、現場で役立つ視点で整理します。


1|年代別ダイジェスト:何がどう変わったか

① 戦後〜高度成長(1950–70s):職人技から量産へ

  • **木型+生型(グリーンサンド)**が主流。

  • 溶解は重油炉・ガス炉・反射炉が中心、合金はJIS系の汎用品。

  • 品質は破面観察・寸法ゲージが主で、欠陥解析は経験依存。

② 輸出拡大と自動車要求の高まり(1980–90s)

  • 化学硬化砂(フラン・フェノール樹脂)やコールドボックス中子が普及、薄肉・複雑形状に対応。

  • 溶湯処理にアルゴン脱ガス・ロータリーデガッサセラミックフィルタが導入。

  • 分光分析(OES)・水素量測定・X線が日常化。ISO 9001自動車規格が現場に入る。

③ グローバル調達と自動化(2000s)

  • CNC・3D CADで木型→アルミ型、治具の高精度化。

  • 自硬性砂の機械混練・再生ライン、造型機のサーボ化でバラツキ圧縮。

  • 溶解の電気化(抵抗炉・誘導炉)や自動注湯の採用が進む。

④ デジタル・環境・短納期の三重苦→三位一体(2010s)

  • **鋳造CAE(充填・凝固・欠陥予測)**が設計の標準ツールへ。

  • CTスキャン・画像解析で内部品質を“見える化”。

  • VOC・粉じん・CO₂への規制対応、砂再生・バインダ低VOC化が加速。

  • 少量多品種・試作短納期に**3Dプリント砂型(バインダジェット)**が登場。

⑤ いま(2020s〜):EV化・軽量化・データ連携

  • モータハウジング、インバータケース、バッテリートレイ等の大型薄肉化に対応。

  • デジタルスレッド(CAD→CAE→型→造型→検査→トレース)で手戻り最小化。

  • セカンダリーアルミの活用、LCA視点の取引が広がる。


2|プロセス技術の進化:砂・溶湯・金型・注湯

砂・中子

  • 生型(クレイ系):量産に強い。回収・再生の最適化で品質安定。

  • 自硬性砂(フラン/フェノール):大型・厚肉・寸法安定。VOC対策がカギ。

  • コールドボックス中子:複雑中空に強い。アミン対策・臭気管理は設備勝負。

  • 無機バインダ:低臭・低発煙。耐湿性と強度の両立がテーマ。

  • 3Dプリント砂型木型レスで最短納期。量産前試作や年次小ロットに効く。

溶解・溶湯処理

  • :反射炉→**ガス高効率炉・電気炉(抵抗・誘導)**へ。熱ロス可視化が定着。

  • 処理脱ガス(アルゴン/窒素)精錬フラックスフィルタリング

  • 成分管理:OESでその場調整、水素量監視でピンホール抑制。

ゲーティング・押湯設計

  • 職人の勘→CAEとモジュラス設計

  • チル・冷し金の適用、押湯スリーブ・カバーで歩留まりと健全性を両立。

注湯と固化

  • 自動注湯・流量制御で乱流最小化、酸化膜巻き込みを回避。

  • 真空補助・負圧で充填性向上、スクイズ併用で気孔減。


3|品質保証の変遷:破面と勘から、データと可視化へ

  • 受入/工程管理:OES(成分)、水素・温度・酸化膜指数のルーチン化。

  • 検査:X線→CT(3D内部欠陥)染色浸透・磁粉(鋼部鋳ぐるみ)寸法CMM・3Dスキャン

  • 工程統計:SPCで粒度・圧縮強度・含水・通気度を管理。

  • フィードバック:検査結果はCAEと不良マップに戻し、次回の湯道修正へ。


4|生産性と安全衛生:人を守り、歩留まりを上げる

  • 自動化:造型・中子セット・型バラシ・ショット・仕上げのセル化。

  • 人の負荷対策アシストスーツ・ハンドリングロボで腰・肩を守る。

  • 粉じん/シリカ:集塵・局排・保護具の標準化。

  • 溶湯災害:湿気・水分混入ゼロのルールと点呼、飛散防止床耐熱個装


5|環境とサステナ:砂・バインダ・エネルギー・アルミ

  • 砂再生:機械・熱処理の組合わせで回収率UP、廃棄量と購入量を双方向で削減。

  • 低VOC化:無機バインダ・低発煙スリーブ・**RTO(蓄熱式酸化炉)**等の導入。

  • エネルギー:炉の断熱・蓋管理・誘導炉の力率最適化

  • 原料リサイクル(セカンダリー)アルミの比率増、合金設計で機械特性と鋳造性の両立


6|市場の変化:軽量化・EV・小ロット化

  • 自動車:EVでケース・トレイの大型薄肉が増加、寸法安定と内部健全性の両立が必須。

  • 産機・インフラ:一体化・複雑化、試作短納期の要求が増。

  • 航空・ロボ:ポロシティ・介在物の厳格管理、トレーサビリティが勝負。


7|デジタルスレッド:設計から検査までを一本に

  • CAD→CAE→CAM→造型→検査→台帳をIDで連結。

  • 不良発生時は検査点群→CAEへリプレイ→ゲート修正→型データ即日更新

  • 原単位の見える化:砂・合金・ガス・電力・時間を品番別に集計し儲けの構造を把握。


8|ショートケース

A|薄肉箱物の巻き込み気孔を1/5に

  • 介入:CAEで自由表面乱流を低減する湯道再設計+自動注湯の流量プロファイル導入。

  • 結果:内部気孔率−80%、仕上げ工数−15%。

B|VOCを半減

  • 介入:中子を無機バインダへ、造型室に局所RTO

  • 結果:作業環境改善、近隣苦情ゼロ、CO₂も削減。

C|試作リードタイムを10日短縮

  • 介入:3Dプリント砂型+アルミ簡易治具、CTで初回合否判定→CAEへ即フィードバック。

  • 結果:試作〜量産移行が1スプリント短縮。


9|現場で効くチェックリスト

砂・中子

  • 粒度・含水・通気・強度のSPC管理

  • 中子ガス抜き位置/断面積の標準化

  • 砂再生比率と新品補給の最適点

溶湯

  • 水素量・温度・保持時間の基準票

  • フィルタ・フラックスのロット管理

  • 取鍋の予熱・清浄度点検

型・注湯

  • ゲート・押湯・チルの標準テンプレ

  • 注湯流量プロファイルのレシピ化

  • 真空補助・ベントの効き確認

検査・台帳

  • CT/X線の判定基準(欠陥等級)

  • 不良マップ→CAEへの戻し運用

  • 合金・砂・エネルギーの原単位を品番別に集計


10|これから5年の論点

  1. 3Dプリント砂型の常用化:試作だけでなく小ロット量産へ。造型コストと後処理の最適点。

  2. 無機バインダ×高機能中子:低臭・高強度・耐湿の三立。

  3. 低炭素アルミ調達:再生材比率や再エネ電力のLCAを価格に織り込む。

  4. インラインCT/AI判定:100%検査×自動判定で手離れ。

  5. デジタルスレッド完成:設計変更がその日の型データ・作業票に反映される“遅延ゼロ”の工場へ。


11|90日アクション

  1. 不良トップ3の“因果”をCAEで検証
     現物CT/X線→不良マップ→充填・凝固解析→湯道・押湯の一次修正。1サイクルで効果を数値化。

  2. 砂と溶湯の“基準票”を更新
     粒度・含水・通気、H₂・温度・保持時間の許容レンジと異常時対応をA3一枚に。現場掲示。

  3. LCAミニサーベイ
     合金(再生比)、燃料・電力、砂再生率の原単位を見える化。CO₂と原価の二軸で改善候補を抽出。


結び

砂型アルミ鋳造は、自由度と包容力を武器に、時代ごとの要求に応えてきました。
生型・自硬性・中子・3Dプリント、反射炉・電気炉、勘・CAE、破面・CT——どの時代でも要は同じ。**“健全で、寸法が出て、間に合う”**ことです。

次の現場では、CAEで因果を掴む/基準票をA3で運用する/原単位を見える化の三手から。
砂と溶湯の“当たり前”を磨き込むことが、これからの競争力になります。

 

 

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