オフィシャルブログ

日別アーカイブ: 2026年7月17日

長川原金属のよもやま話~複雑な形状をアルミで~

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属です。

 

~複雑な形状をアルミで~

 

自動車部品、産業機械部品、ポンプ部品、建設機械部品、船舶部品、電気設備部品など、私たちの身の回りでは数多くのアルミ鋳造品が使われています。

アルミニウムは、鉄と比べて軽く、加工しやすく、耐食性にも優れた金属です。その特性を生かしながら、複雑な形状の部品を一体で製造できる方法の一つが、砂型アルミ鋳造です。

砂型鋳造とは、砂を固めてつくった鋳型へ溶かしたアルミニウムを流し込み、冷却・凝固させて製品をつくる方法です。

砂型は、製品を取り出す際に壊すことができるため、内部に空洞がある部品や、曲面、リブ、突起などを持つ複雑な形状にも対応しやすい特徴があります。

また、金型を使う鋳造方法と比較すると、少量生産や大型製品、試作品などにも向いています。

しかし、砂へ溶けたアルミを流し込めば、簡単に製品が完成するわけではありません。

模型の寸法、砂の硬さ、湯道の配置、溶湯温度、注ぐ速度など、さまざまな条件が品質へ影響します。わずかな判断の違いによって、寸法不良、湯回り不良、巣、砂かみなどが発生する可能性があります⚠️

今回は、砂型アルミ鋳造業における鋳型づくりと注湯技術についてご紹介します。

製品図面を読み取る技術

砂型アルミ鋳造の仕事は、完成品の図面を確認するところから始まります。

図面には、製品の形状、寸法、公差、肉厚、加工部分、材質などが記載されています

鋳造品は、機械加工品のように最初から最終寸法でつくるとは限りません。

冷却時の収縮、後工程の切削加工、表面仕上げなどを考慮し、模型の寸法を調整する必要があります。

アルミニウムは、溶けた状態から固体になる際に体積が変化します。そのため、完成寸法より少し大きな模型を用意します。

また、旋盤やフライス盤で削る場所には、加工代を設けます。

加工代が少なすぎると、鋳肌や寸法のばらつきを削り切れません。反対に多すぎると、切削時間や材料の無駄が増えます。

製品の用途や加工方法を理解し、必要な余裕を模型へ反映することが重要です。

模型を製作する技術

鋳型のもとになる形を模型と呼びます。

模型には、木材、樹脂、金属、発泡材などが使用されます。

少量生産や試作品では木型や樹脂型、繰り返し生産では耐久性のある金属型などが選ばれることがあります

模型は、完成品と同じ形をしているように見えますが、鋳造に必要なさまざまな工夫が加えられています。

砂から模型を抜きやすくするための抜き勾配、冷却収縮を見込んだ寸法、加工代などです。

抜き勾配が不足すると、模型を砂型から取り出す際に鋳型の壁を崩してしまいます。

勾配を大きくしすぎれば、製品形状や加工量へ影響します。

模型の表面に傷や段差があると、その形が鋳物表面へ転写されます。

寸法だけでなく、表面の滑らかさや分割位置まで丁寧に仕上げることが必要です✨

鋳型の分割位置を考える

砂型は、一般的に上下へ分割して製作します。

模型を鋳枠の中へ入れ、その周囲へ砂を込めて上型と下型をつくります。

どこで型を分割するかによって、造型のしやすさや鋳造品の品質が変わります。

複雑な形状の場所で分割すると、模型を抜きにくくなったり、型合わせのずれが製品へ表れたりします。

一方で、単純な平面だけを優先すると、中子の数が増えたり、仕上げ作業が難しくなったりする場合があります

鋳造技術者は、製品形状、模型の抜き方向、中子、湯道、後加工などを考えながら、適切な分割位置を決めます。

設計段階で鋳造しやすい形状へ調整できれば、不良の削減や生産性向上につながります。

鋳物砂を適切に管理する

砂型には、粒の大きさがそろった鋳物砂が使用されます。

砂だけでは形を保てないため、粘結材や水分などを加え、固めやすい状態へ調整します

鋳物砂には、模型の細かな形状を再現する性質、溶湯の圧力に耐える強度、ガスを外へ逃がす通気性などが求められます。

砂が柔らかすぎると、注湯時の圧力によって鋳型が崩れる可能性があります。

反対に硬く締めすぎると、通気性が低下し、鋳型内部の空気やガスが抜けにくくなります。

砂の水分が多すぎる場合にも、溶湯の熱によって大量の水蒸気が発生し、ガス欠陥につながることがあります

砂の温度、粒度、水分、強度などを確認し、季節や作業環境に応じて調整します。

長く使用した砂には、金属片や焦げた粘結材などが混ざることがあります。

異物を取り除き、必要に応じて新しい砂を加えながら、安定した性質を維持します。

砂を均一に込める造型技術

造型では、模型を鋳枠へ配置し、その周囲へ鋳物砂を入れて締め固めます。

手作業で砂を込める方法のほか、機械によって振動や圧力を加える方法があります

模型の周辺や細かな凹部へ砂が十分に入っていないと、鋳型の形が崩れたり、製品の一部が欠けたりします。

砂を一度に大量投入するのではなく、細かな部分へ丁寧に行き渡らせます。

鋳型全体の硬さを均一にすることも重要です。

一部だけ柔らかければ、溶湯の圧力で膨らみ、寸法不良につながる可能性があります。

反対に一部だけ硬すぎれば、ガスが抜けにくくなります。

造型後には、型の表面に割れ、欠け、砂落ちなどがないかを確認します

わずかな傷でも、注湯後には鋳物表面の突起や欠損として現れる場合があります。

模型を壊さずに抜く技術

砂を固めた後は、模型を鋳型から抜き取ります。

この作業を型抜きと呼びます。

模型を急に引き上げたり、斜めへ動かしたりすると、砂型の角や壁が崩れる可能性があります⚠️

模型へ軽い振動を与え、砂との密着を緩めてから、決められた方向へゆっくり抜きます。

抜き勾配が適切であっても、複雑な形状や深い部分では慎重な作業が必要です。

型抜き後に小さな欠けが見つかった場合は、専用の砂や工具を使って補修します。

ただし、無理に補修すると寸法や形状が変わることがあります。

補修可能な範囲か、型をつくり直すべきかを判断することも技術の一つです。

中子で内部形状をつくる

鋳造品の内部に穴や空洞をつくる場合には、中子を使用します。

中子は、砂を固めてつくられた内部用の型です。

ポンプケース、配管部品、エンジン部品など、内部に流路を持つ製品には欠かせません

中子は、注湯時に溶湯の熱と圧力を受けるため、十分な強度が必要です。

しかし、強すぎると鋳物が冷却収縮する際に抵抗となり、割れや変形を引き起こす場合があります。

鋳造後に崩して取り出しやすい性質も求められます。

中子の位置がずれると、製品内部の肉厚が片側だけ薄くなります。

鋳型の中へ正確に設置し、注湯時に浮いたり動いたりしないよう支持します。

中子の内部から発生するガスを逃がすため、通気経路を設けることもあります

内部形状は完成後に直接見えにくいため、中子の精度と管理が非常に重要です。

湯道を設計する技術

溶けたアルミニウムを鋳型へ流し込む通路を、湯口や湯道と呼びます。

湯道の位置、大きさ、形状によって、溶湯の流れ方が変わります

流れが速すぎると、溶湯が乱れ、空気や酸化膜を巻き込みやすくなります。

遅すぎると、鋳型全体へ行き渡る前にアルミが冷え、湯回り不良や未充填が発生する可能性があります。

製品の薄い部分、厚い部分、複雑な形状などを考え、溶湯が滑らかに充填される経路をつくります。

複数方向から溶湯を入れる場合は、流れ同士がぶつかる位置にも注意が必要です。

ぶつかった部分で酸化膜が巻き込まれると、内部欠陥につながる可能性があります。

湯道設計は、見えない鋳型内部の金属の流れを予測する技術です。

押湯で収縮を補う

アルミニウムは、溶けた状態から固まる際に収縮します。

製品の厚い部分では、外側が先に固まり、内部の溶湯が不足して空洞ができることがあります。

これを防ぐために設けるのが押湯です。

押湯には、製品部分より遅く固まり、凝固中に不足する溶湯を供給する役割があります

押湯の位置や大きさが不適切だと、必要な場所へ溶湯を供給できません。

大きすぎれば材料歩留まりが悪くなり、切断や再溶解の手間も増えます。

製品の肉厚、凝固順序、温度分布などを考え、適切に設計します。

冷やし金と呼ばれる金属材料を鋳型へ配置し、特定の部分を早く凝固させる方法もあります❄️

押湯と冷やし金を組み合わせ、製品の端から押湯側へ向かって順番に固まる状態をつくります。

アルミ合金を正しく選ぶ

アルミ鋳造に使用される材料には、さまざまな合金があります。

シリコン、マグネシウム、銅などを含む割合によって、流動性、強度、耐食性、熱処理性などが変わります

複雑で薄い形状には流れやすい合金、高い強度が必要な部品には強度特性に優れた合金など、用途に応じて選びます。

異なる材料を誤って混ぜると、期待した性能を得られない可能性があります。

材料の種類ごとに保管場所や表示を分け、投入時に確認します。

戻り材や湯道部分を再溶解して使用する場合も、合金種が混ざらないよう管理します。

成分が規格内であるかを分析し、必要に応じて成分調整を行います

鋳造しやすさだけでなく、完成品に求められる機械的性質を満たす材料を使用することが重要です。

溶解炉でアルミを溶かす技術

アルミニウム材料は、るつぼ炉や反射炉などで加熱して溶かします。

炉の温度が低すぎれば、材料が十分に溶けず、鋳型へ流し込みにくくなります。

高すぎると酸化が進み、ガスを吸収しやすくなる場合があります️

材料を炉へ投入する際には、水分が付着していないことを確認します。

濡れた材料を高温の溶湯へ入れると、水分が瞬間的に蒸気となり、溶湯が激しく飛散する危険があります⚠️

工具や取鍋も十分に乾燥させます。

炉内の温度を測定し、合金や製品に適した範囲で管理します。

材料を追加した直後は温度や成分が不均一になるため、適切に保持・かくはんし、全体を安定させます。

溶湯中の不純物を除去する

溶けたアルミニウムの表面には、酸化物や不純物が浮かぶことがあります。

これを適切に除去しなければ、鋳型へ流れ込み、製品内部の欠陥につながる可能性があります。

表面のドロスを専用工具で除去します

ただし、強くかき混ぜると酸化膜を細かく砕き、溶湯内部へ巻き込んでしまいます。

静かに作業し、健全な溶湯を必要以上に取り除かないことが重要です。

溶湯には水素ガスが溶け込みやすく、凝固時に気泡となって内部へ残ることがあります。

必要に応じて脱ガス処理を行い、溶湯中のガス量を減らします

清浄度を高めるため、フィルターを通して注湯する方法もあります。

溶湯をきれいな状態に保つことが、内部品質の向上につながります。

注湯温度を管理する

鋳型へ流し込むときの溶湯温度は、製品品質へ大きく影響します。

温度が低すぎると、薄い部分や遠い部分まで流れる前に固まり、形状を完全に再現できない場合があります。

温度が高すぎると、ガス吸収、酸化、砂の焼付き、凝固時間の増加などにつながります

温度計を使用し、決められた範囲にあることを確認します。

炉から取鍋へ移し、鋳型まで運ぶ間にも温度は下がります。

作業距離、取鍋の予熱状態、外気温、鋳型の大きさなどを考慮し、適切なタイミングで注湯します。

経験だけで温度を判断せず、数値によって管理することが安定した品質につながります

一定の速度で注湯する技術

注湯では、溶湯を途中で止めず、適切な速度で連続して流し込みます。

遅すぎると、先に入った溶湯が固まり、後から入る溶湯と一体化しにくくなります。

速すぎると、湯道内の流れが乱れ、空気や酸化膜を巻き込みやすくなります

取鍋を安定して操作し、湯口へ正確に注ぎます。

大きな製品では、取鍋自体が重くなるため、クレーンや専用搬送設備を使用することがあります️

複数人で作業する場合は、合図と役割を明確にします。

注湯中に鋳型から異常な煙や溶湯漏れが発生した場合には、無理に続けず、安全な位置へ退避します。

高温の溶湯を扱うため、品質だけでなく安全を最優先に判断します。

鋳型内のガスを逃がす

溶湯を流し込むと、鋳型内部にあった空気や、砂・粘結材から発生したガスが押し出されます。

ガスの逃げ道が不足すると、製品内部へ気泡として残ったり、溶湯の充填を妨げたりします

鋳型にガス抜き穴を設け、空気やガスが外へ出られるようにします。

中子内部にも通気経路をつくる場合があります。

ただし、ガス抜きを増やしすぎると、溶湯が漏れたり、製品表面に不要な突起が増えたりすることがあります。

必要な位置へ適切な大きさで設けることが重要です。

砂の通気性や水分管理とあわせて考え、ガス欠陥を防ぎます。

冷却時間を守る

注湯後は、アルミが十分に凝固するまで鋳型を動かさずに冷却します。

早く取り出そうとして型を崩すと、まだ柔らかい鋳物が変形したり、割れたりする可能性があります⚠️

反対に、必要以上に長く型内へ置くと、生産効率が低下し、砂の焼付きが強くなる場合があります。

製品の大きさ、肉厚、合金、鋳型条件などに応じて適切な冷却時間を設定します。

厚い部分は、外側が固まっていても内部が高温のままの場合があります。

外観だけで判断せず、過去のデータや温度条件をもとに型ばらしの時期を決めます。

型ばらしと砂落とし

十分に冷却した後、鋳枠から鋳物を取り出します。

砂型を崩し、製品表面や内部に付着した砂を除去します

振動装置やショットブラストなどを使用する場合もあります。

型ばらし直後の鋳物は高温であることがあるため、耐熱手袋や保護具を使用します

無理な衝撃を与えると、薄い部分や突起が割れる可能性があります。

中子砂が内部へ残ると、後の機械加工や製品使用時に問題となります。

内部流路まで確実に砂を除去し、必要に応じて内視鏡などで確認します。

安全に溶湯を扱うための技術

砂型アルミ鋳造では、数百度の高温溶湯を扱います。

保護面、耐熱服、手袋、安全靴などを着用し、飛散や輻射熱から身体を守ります

作業場所に水分や濡れた工具を持ち込まないことが基本です。

床へ水がたまっている状態で溶湯がこぼれると、急激な蒸気発生によって飛散する危険があります。

通路を整理し、取鍋を持った作業者が安全に移動できる状態を保ちます。

炉やクレーン、取鍋の点検も欠かせません。

設備の小さな不具合が、高温金属の漏出や落下につながる可能性があります。

まとめ

砂型アルミ鋳造業における鋳型づくりと注湯技術は、複雑な形状を持つアルミ製品を高い精度で生み出すための技術です。

製品図面を読み取り、収縮や加工代を考慮した模型を製作し、砂の水分や強度を管理しながら鋳型をつくります。

内部形状には中子を使用し、湯道や押湯によって溶湯が均一に行き渡り、順序よく凝固する状態を設計します

溶解工程では、材料、温度、成分、ガス、不純物を管理し、適切な速度で注湯します。

砂、金属、熱、空気の状態が少し変わるだけでも、鋳造品質へ影響します。

職人の経験と数値による工程管理を組み合わせ、溶けたアルミを設計どおりの形へ仕上げること。

それが、砂型アルミ鋳造業における鋳型づくり・注湯技術の大きな役割なのです✨