オフィシャルブログ

第11回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

本日は第11回砂型アルミ鋳造雑学講座!

今回は、砂型アルミ鋳造を行う前に確認すべき重要事項を、「設計」「材料」「鋳型」「注湯・冷却」「品質保証」の5つのステージに分けて徹底解説します♪

 

砂型鋳造(Sand Casting)は、複雑な形状を比較的低コストで製作できる鋳造法のひとつであり、アルミニウム合金との相性も良いため、自動車部品や機械部品などに広く活用されています。

しかしその一方で、鋳造は「事前準備が8割」とも言われるほど、工程前の確認作業が製品品質を大きく左右します。とくにアルミ合金は鋳造時の特性にクセがあり、ガス巻き込みや収縮、酸化などのリスクがつきものです。


🧩 1. 設計段階での事前確認

◯ 鋳造性のある設計か?

鋳造用に設計された製品かどうかを最初にチェックしましょう。

✅ チェックポイント

  • 抜き勾配の確保(通常1〜3°程度)

  • 肉厚の均一性(急激な厚さ変化は収縮・巣の原因)

  • アンダーカットの有無(コアや分割型で対応可能か)

  • コーナーR(フィレット)の適正化(応力集中回避)

設計レビュー(DR)で鋳造技術者を交えたフィードバックを必ず実施しましょう。


🧪 2. 材料に関する事前確認

◯ 使用するアルミ合金の選定と特性理解

よく使われるアルミ合金と特性

  • ADC12(Al-Si-Cu系):流動性◎、機械的強度〇

  • AC4C(Al-Si-Mg系):溶接性◎、耐食性〇、機械加工性〇

✅ 確認すべき内容

  • 合金成分の標準値と許容範囲

  • 材料ロットの成分分析表(ミルシート)

  • 保管方法(酸化防止の観点で乾燥状態を維持)

また、使用するスクラップ材やリサイクル材がある場合は、不純物やガスの巻き込みに注意しましょう。


🏗 3. 砂型・中子(コア)の確認事項

◯ 砂材とバインダーの適正使用

✅ チェック項目

  • 使用する砂の種類(シリカ砂 or セラミック砂)

  • バインダーの種類と配合比(フェノール・ファーラン系など)

  • 硬化剤との反応時間と強度(脱型前に必要な時間)

また、中子の配置・補強が不十分だと、湯流れで破損し欠陥に直結するため、設計通りの配置確認と寸法精度チェックが不可欠です。

◯ 湯口系の設計と配置

  • 主湯口(ゲート)、ランナー、リザーバーの設計

  • ガス抜き(ベント)位置の確認

  • 冷却材(冷金)やチルブロックの設置位置

湯流れシミュレーション(CAE)による事前解析を推奨します。


🔥 4. 注湯・冷却条件の確認事項

◯ 溶解・注湯温度の管理

アルミニウムは酸化しやすいため、溶湯管理が命です。

✅ 基本温度条件

  • 溶解温度:約680〜730℃

  • 注湯温度:約650〜700℃

  • 金型温度(必要に応じて):100〜200℃

また、注湯前には必ず脱ガス処理(フラックス処理・ロータリーデガス)を実施し、ピンホール欠陥を予防しましょう。

◯ 冷却・凝固条件の均一化

  • 冷却速度を管理して内部収縮・引け巣を防止

  • 冷却装置の使用 or チル材の活用

  • 凝固方向(上から下、中心から外へ)を意識した設計


🧪 5. 品質管理・検査の確認事項

◯ 外観・寸法検査の準備

  • 専用ゲージや型合わせ治具の整備

  • 主要寸法の公差設定と測定ポイントの明確化

  • 外観基準(バリ、気泡、ひけ巣など)の定義

◯ 内部欠陥の検査方法

  • X線検査(内部ピンホール、巣、割れ)

  • 超音波探傷(連続気泡・溶け込み不良)

  • シュリンク検査(必要に応じて切断検査)

初品検査時にはフルチェックを行い、量産移行時には抜き取り検査のルールを明確化しましょう。


✅ まとめ:砂型アルミ鋳造の成功は“事前の段取り力”にあり!

砂型アルミ鋳造は、「手間のかかる工法」ですが、その分、事前準備を徹底すれば非常に高品質な鋳造品が得られます

📝 最終チェックリスト(抜粋)

項目 チェック内容
設計 抜き勾配・肉厚・アンダーカットの有無
材料 合金種、成分分析、スクラップ混合率
砂型 砂材種、湯口設計、中子の配置と固定
注湯 溶解温度、脱ガス処理、注湯スピード
品質 寸法公差、外観基準、非破壊検査方法

📌 実際の鋳造現場では、「設計から造型、注湯、検査」までが一貫して連動している必要があります。各工程の“見える化”と情報共有を行い、チーム全体で品質の底上げを図っていきましょう。

 

株式会社長川原金属では、一緒に働いてくださる仲間を募集中です!

私たちが採用において最も大切にしているのは、「人柄」です。

当社は小ロットでニッチな部品の鋳造を得意としており、毎日違うものを造っているため日々の業務は変化があり、モノづくりが好きな方には楽しんでいただけると思います。

ぜひ求人情報ページをご覧ください。皆さまのご応募を心よりお待ちしております!

詳しくはこちら!