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第12回砂型アルミ鋳造雑学講座

皆さんこんにちは!

株式会社長川原金属、更新担当の中西です。

 

本日は第12回砂型アルミ鋳造雑学講座!

今回は、砂型アルミ鋳造における設計について、基本的な考え方から具体的な設計テクニック、CAE活用まで、現場目線で深く解説していきます♪

 

砂型鋳造は、複雑な形状を低コストで実現できる鋳造法として、自動車部品、機械構造材、航空関連部品などで幅広く利用されています。特にアルミニウム合金は、軽量でありながら強度と耐食性にも優れ、サステナブル素材としての注目も集まっています。

しかしその一方で、「鋳造欠陥」や「寸法バラツキ」などの課題に悩まされるケースも多く、設計段階での最適化がプロジェクト全体の成否を左右すると言っても過言ではありません。


🔧 1. 鋳造向け設計の基本理念:加工ではなく「流して固める」発想

金属加工と鋳造では、製品を形づくる思想そのものが異なります

加工設計の発想 鋳造設計の発想
精密・寸法重視 流動・凝固を優先
削ることで形作る 流し込んで固める
小ロット・高精度 中~大ロット・形状自由度重視

したがって、設計段階では以下の3つの観点が特に重要になります。

  • 流動性:溶湯が型内をスムーズに流れる形状か?

  • 凝固性:健全な凝固が可能な肉厚と配置か?

  • 脱型性:鋳型から無理なく抜ける設計か?


📐 2. 設計における具体的なチェックポイント

◯ ① 抜き勾配の確保

砂型鋳造では、鋳物を型から抜く際に摩擦抵抗がかかるため、抜き勾配(ドラフト角)を設ける必要があります。

  • 通常:1~3度の抜き勾配が目安

  • 垂直方向の壁は勾配なしだと型崩れや傷の原因

◯ ② 肉厚の均一化とスムージング

急激な肉厚変化は、以下の欠陥リスクを高めます

  • 引け巣(冷却時の収縮で空洞ができる)

  • 凝固割れ(内部応力によるひび割れ)

  • ガス巻き込み(湯流れの乱れ)

✅ 対策例

  • 肉厚は極力均一に

  • 遷移部分にはフィレット(R)処理

  • 側面の厚肉部分には冷却補助材(チル)を設計

◯ ③ リブ・ボスの設計

強度向上のためにリブやボスを追加する場合も、鋳造性を考慮した設計が必要です。

  • リブは高さの1/3以下の厚さ

  • ボスは鋳造方向に配置、通気性と冷却性を重視

◯ ④ 鋳造方向の最適化

製品の配置方向によって、型分割や中子(コア)の数が変わります。複雑な形状を実現するにはコアの使用が不可欠ですが、コア数が増えるとコスト・歩留まり・リスクが上昇します。

✅ ポイント

  • 可能な限り鋳造方向を意識して設計

  • コアの使用を最小限に

  • 複数分割型を避け、1方向脱型が理想


💡 3. 湯流れ・凝固のCAE活用による設計最適化

最近では、設計段階で湯流れ・凝固のシミュレーションを行い、欠陥の予測と改善提案が可能です。これにより、試作段階での失敗を大幅に減らすことができます。

CAEでできること

  • 湯口設計の最適化(ランナー・ゲート・リザーバーの位置)

  • 凝固時間のマッピング → 引け巣リスクの可視化

  • 温度分布の可視化 → チル材・冷却装置の配置支援

導入コストはかかりますが、初期段階での鋳造欠陥の予防に絶大な効果を発揮します。


🧱 4. 加工余裕(機械加工を前提とした設計)

アルミ鋳物は鋳造後に加工工程が加わることが多いため、設計段階で加工余裕(マシニングマージン)を確保しておく必要があります。

寸法公差 推奨加工余裕
±0.1~0.3mm 1~2mm
高精度部 最大3mm以上

また、加工基準面は鋳造でも変形しやすいため、芯出し可能な位置に設計することが重要です。


🛠 5. 設計レビューの重要性

設計が完成した段階で、鋳造現場・加工現場・品質管理部門を交えたDR(Design Review)を実施することで、以下のトラブルを未然に防げます

  • 湯流れ不良 → ゲート設計見直し

  • 中子破損 → 配置・強度の再検討

  • 後加工不可 → 余裕不足・冶具干渉

設計者だけで完結させない“現場連携型設計”が鍵です。


✅ 砂型アルミ鋳造設計は“流す・固める・抜く”のバランス設計

砂型アルミ鋳造は「型を作り、金属を流し、固めて、抜く」この物理的プロセスを正しく理解した設計がすべての基盤です。

設計時の5大原則

  1. 抜き勾配と脱型性を確保する

  2. 肉厚と凝固性を意識する

  3. 湯流れシミュレーションでリスクを可視化する

  4. 加工余裕と仕上げ面を明確に設計する

  5. 全体レビューで現場との整合性を図る

このような観点で設計を進めることで、鋳造トラブルや後戻りを最小限に抑え、高品質・高効率な生産が実現できます。

 

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